やっぱり小説ではなかなか難しいということだろう。
僕が知っている限り、お笑い系の小説というのは、東野圭吾の「毒笑小説」「快笑小説」「黒笑小説」「名探偵の掟」「超殺人事件」、京極夏彦の「どすこい」、蘇部健一の「六枚のとんかつ」、奥田英朗の「インザプール」「空中ブランコ」ぐらいだろうか。本当に少ないと思う。
やはり、お笑い的なものは結局、視覚的な面白さが要求されるのだろう。少なくとも今は。
昔なら、落語とか漫才とかは、ほとんど喋りだけで笑いを取るもので、これは小説で笑いをやることに近いかもしれない。しかし今では、視覚的な動きやリアクションといったもので笑いを取るような芸人が多くて、すなわちそれが求められているということだろうし、そういう点が、映像やコミックでコメディが広がっていく一因なんだろうと思う。
「毒笑小説」か「快笑小説」のどっちかの文庫の巻末で、東野圭吾と京極夏彦の対談があって、そこで、お笑い的な小説は簡単に書けるみたいに思われるかもしれないけど、普通の小説を書くよりも遥かに大変だ。しかも、テンションのある時に一気に書かないと続かないから、どうしても枚数は短くなる、つまり短編しか書けない、とそういうようなことが書いてあった。
そう、上記で挙げた、僕が知っているお笑い系の小説は、すべて短編集なのである。
そう考えてみると、本作のすごさがなんとなくわかる。本作は、ばかばかしいストーリーが続くドタバタ系の小説で、かつなんと長編なのである。
ダグラス・アダムズという作家はイギリスの人で、最近亡くなったようなのだけど、天才だと言われていたようである。本作はシリーズ作でラジオドラマの脚本として書かれたものを小説にしたもので、ベストセラーになったらしい。
まあそれ以上のことはわからないんだけど。
とにかく、僕が今まで読んできた中で初の、ドタバタ系長編作というわけですね。
書くこともあまりないので内容に入りたいと思います。
ある日の朝、アーサー・デントは、家の外にブルドーザーが停まっていることに気付く。そうだ、そういえば昨日誰かが変なことを言っていたな…。
そうだ!あのブルドーザーはうちを壊しに来たんだ!
なんでも、新しいバイパス建設のために、どうしても壊さなければならないのだとか。そうはさせるか、とブルドーザーの前に横たわり抗議するアーサー。
さて一方、アーサーの友人であるフォードは、なんとなんと実は宇宙人であり、『銀河ヒッチハイク・ガイド』という、銀河をヒッチハイクで旅する人のためのガイドブック製作の取材のために地球に来たところ何故か置き去りにされたのだとか。
そのフォードが、ブルドーザーの前に横たわるアーサーを呼び出してこう告げる。
地球はもうすぐ滅びるんだ。
なんと、銀河規模のバイパス建設のために、地球が破壊されることに決まったらしい!
ヒッチハイカーでもあるフォードに付き従って、ごくごく平凡な一英国人だったアーサーは、銀河を旅することに、そして奇妙な出来事に巻き込まれ続けることに…。
というような話ですね。
どこをとってもばかばかしい話で、そのばかばかしさの一貫性はなかなかのものです。発想が奇抜で、よくそんなことを思いつくな、という感じです。
さて、本作のユーモア的な部分なんですが、面白い部分はめちゃくちゃ面白い。思わず笑ってしまいます。でも、『きっとここは面白い部分なんだろうな』という部分で、何が面白いんだろうか、と思ってしまうようなところも結構あったりします。多分、文化の違いとか言語の違いとか、とにかく『何を面白いと感じるか』という点が違うようで、その面白さのすべてを体感することは出来ませんでした。
また、宇宙空間や移動技術など、とにかく設定が細かくて、うまく理解できない部分もあったけど、たぶん物理的な知識も結構ある人なんだろうなと思いました。
本作で、ああそうかと思ったことがあります。前にヤフーのニュースで、『電卓計算機能がついて、しかもこんな計算の答えも出します』みたいなのがあって、それが、
『生命、宇宙、その他もろもろの答え=42』
というものでした。多分これで検索すれば今も出ると思いますが。
それを見た時、なんで42なんだろうと思ったけど、本作でその話が出てきて、これを踏まえているのか、と思ったりしました。
なんというか、たぶん本作の本当の面白さみたいなものを丸ごと堪能することはできなかたような気がするけど、ドタバタ的な展開はなかなかだと思うし、まあ何も考えずにさらさらと読める話ではないかな、と思います。
まあ、気が向いたら読んでみてください、という感じです。どうやら、河出文庫の訳よりも、既に絶版になった新潮文庫の訳の方がいい、とamazonでは評価されていましたが。
ダグラス・アダムズ「銀河ヒッチハイク・ガイド」

銀河ヒッチハイクガイド文庫