今回も相も変わらず異常な話。主要な登場人物は少ないくせに、それぞれが個性の塊のような人間。
櫃内様刻と櫃内夜月は兄弟で共に同じ高校に通う。この二人は禁じられた一線を現在進行形で踏み越えつつある、つまるところ近親相姦レベルの関係。不安定な妹のために常に最大の努力で最善の選択をし続ける兄。二人は際どいラインで何かを守りつつあるが・・・
迎槻箱彦と琴原いりすは、様刻の友達。そして保健室のひきこもりであり、なおかつ学園最大の知能を備える極めて激しい対人恐怖症(対視線恐怖症?人込み恐怖症?)の病院坂黒猫。だいたいこんな感じが登場人物たち。
妹を守ろうとし、妹にちょっかいをだす数沢という生徒が、体育館で殺されているのが見付かる。この学園は登下校の際に、登下校時の時間が記録されるシステムがあり、そのために事件は複雑になる。
警察関係者からの情報は一切なく、つまり死亡推定時刻やアリバイなどは知る由もなく、様刻と黒猫はこの殺人事件に首を突っ込みはするのだが・・・
ほぼ推理の過程はない。殺人は起きるが、その後も推理よりも彼等の一風変わった日常が描かれ、登場人物たちがあーだこーだ推理するようなことはない。この殺人事件をきっかけに様刻・夜月・いりす・箱彦・黒猫の世界はどんどん崩壊していき、というか崩壊する。
ミステリーであることは確かに間違いないんだけど、それがメインってわけでもない、みたいな。まあなんとも説明しにくいことは確かだし、まあ興味をもってくれれば読んでみてください。
ちなみに、印象的なセリフやシーンを抜き出してみます。
「・・・嘘をつくのは簡単だ。嘘をつき続けるのが、難しいんだよ。好きなものを、好きでい続けるのが、難しいのと同じでね。(後略)」
「(前略)世界に対して嘘をついたきみは−今、世界から騙されている気がして、ならないんだ。嘘ばかりついてきたから、誰も信用できない。そう、『嘘つき』が抱える真の悩みはそこなのさ。誰にも信用してもらえないなんて、そんなのは問題じゃない−誰も、信用できなくなってしまう。(後略)」
そんな感じです。
西尾維新「きみとぼくの壊れた世界」
きみとぼくの壊れた世界講談社ノベルス