発端は若竹七海が学生時代に体験したある「事件」だ。当時本屋に勤めていた女史は、ある日両替をする変わったおじさんに出会う。ある土曜日の夕方、そのおじさんは五十円玉を20枚持ってきて、千円札に替えてくれというのだった。不思議に思いながらも両替するのだが、まさかその後ほぼ毎週土曜日の夕方に、同じように両替を頼みに来るとは思いもしなかった。
かくして「両替おじさんの謎」というのが女史には気に掛かっていたのだけれども、お客をあまり詮索しないように、と店長に言われ、さらにわけあってバイトを辞めてしまったために、結局真相は闇のなか、ということになってしまう。
さて、女史が作家になり、新人作家同士の集まりでのこと、この長年の難問をそうか作家の皆さんに解いて貰おう、と思い話をするのだが、みないいアイデアが出ない。と、その場にいたミステリ界では知らぬ者はいない有名編集長戸川氏が、「それではこれを企画にしてみませんか」と一声。居並ぶ作家たちは尻込みするも、そこは押しの戸川、どんどんと話しを進めてしまう。一般から原稿を応募し、それを選考しよう、という話にまで広がり、ようやく形になったのがこの「五十円玉二十枚の謎」というアンソロジー小説なのである。
問題編に次いで、雑誌掲載時に「解等編」を受け持った法月綸太郎・依井貴裕両氏の作品、そして一般から選ばれた六作品、このアンソロジーのための作家書き下ろしが三作品と、なんといしいひさいちの漫画のおまけ付き、という割と豪華にして空前絶後のアンソロジー。プロ・アマ入り混じっての作品など、これ以外にないのではないか?
とにかく皆同じ設定を与えられているにも関わらず、考えること。よくこれだけのバリエーションを設定できたものだ、と感心するばかりです。
もちろん謎は謎のまま、これといった決定打はでないままです。これを、当時両替をしていた人が見ていてくれれば、あるいはそっと教えてくれるのかもしれませんが。それとも、あまりにもくだらない理由過ぎて、教えてはくれないでしょうかね。
珍しい、という意味で手にしてみる価値はあるかと思います。
若竹七海他「五十円玉二十枚の謎」
競作五十円玉二十枚の謎創元推理文庫