2006年04月11日

格闘する者に○(三浦しをん)

就職活動ね…残念ながら、したことがございません。
いや〜、僕は絶対に社会人になんかなれない、とこれはもう大分前からそう思っていました。社会に出て働く?そんなこと出来ますかいな、ってなもんです。
いやでしたね、正直。こう大学生になって、初めのうちはそれでも就職とか全然関係ない感じでうだうだしてるんだけど、段々学年が上がってくると、就職とかがリアルになってきて、ずっと、逃げたい逃げたいって思って、まあホントに逃げましたけど、とにかく僕なんかが社会人になれるわけがないんです、まじで。
本作にこんなことが書いてあります。

『「覇気があって、うだつがあがってて、初対面の人とも明るく打ち解けて。そういうのを面接という限られた時間内でアピールできる、か」
「そうそう。そういうことができる人間を、社会人というのよ」』

まさにそうだよな。とにかくまず、前半の部分でもアウトな人間なのに、さらにそれを面接でアピールするなんて、逆立ちしたって出来るわけがない(そういえばこの表現ってどういうことなんだろう?逆立ちしたってできない、って、なんか考えるとよくわかんない表現だな…)。
面接なんて、考えるだけで恐怖である。
自分のことをアピールしなくてはいけないのである。バイト先で就職活動をしている人が言っていたけど、10分自己アピールをしなくてはいけないのだそうである。それをパスしたら、その後さらに、ボードを使って10分自己アピールをしなくてはいけないのである。
もはや僕にはいじめとしかいいようがありません。自己アピールなんて、30秒だってもちませんよ、絶対。
みんなすごいなぁ、とホントに思うわけです。よく、就職活動だ面接だ、出来るものですね…。羨ましい。
そもそも、まったく知らない人に、自分のことをよく見てもらおうなんて、僕には無理です。僕は、こうしばらく付き合っていく中で、まあそこそこ味が出てくるような、そんなにぼしのような人間で、だから、面接みたいに、チューブから搾り出すようにして魅力をアピールするなんて離れ業は、絶対にできっこないわけです。
いやですね…。今のところ、就職だとかなんだとかまったく考えてないけど、何らかの事情でそんなことをしなくてはならなくなったとしたら、もう憂鬱でどうしようもないでしょうね。
人を選ぶっていうことは、もちろん何か基準を設けなきゃいけないわけで、しかも割とわかりやすくて正当な基準じゃなきゃいけない。だからこそ、試験だとか面接だとかっていうことで、人間を見ようとするわけです。
そういうやり方の中で魅力を出せる人はいいけど、そうじゃない人だって世の中には沢山いると思うんですよね。僕だって、仕事はそれなりにちゃんと出来るし、人間的な付き合いもまあそれなりに出来るし、面白いことは言ったりやったりすることはできないけど、でも場を壊すようなことはしないし空気は読むし、だから割と使える人間だとは思うんだけど、でもやっぱり、面接っていう関門を超えられないわけで、今の社会じゃほぼどうしようもないわけですね。困ったもんです。まあ、あんまり社会人になってサラリーマンしたいとも思わないんですけど。
仕事はお金を稼ぐ手段に過ぎない、みたいなことを森博嗣は言ってますが、お金そのものにも、お金を稼ぐということにもそこまで興味の持てない僕は、やっぱり仕事は楽しい方がいいんじゃないかと思います。僕はただのフリーターだけど、書店での文庫担当というのは、これはもう果てしなく面白い仕事で、僕のいる店が自由すぎるっていうこともあると思うけど、売りたいものを置けるから、自分の好きな本ばっか売っているわけで、これほど楽しい仕事はないなと思います。本屋にいれば本の情報も一杯入ってくるわけで、以前よりもさらに知識が増えました。文芸関係のことなら、かなり知識が一杯になってきました。映画・音楽なんかはからきしですけど。
とにかく僕は今満足しているので全然いいし、就職活動をして面接で落ち込んだりしなくてよかった、とか思いますけど、世の中の人々はやっぱり大変だろうなって思うし、社会よ、もう少し寛大になろうよ、とも思ったりします。まあ何を言っても、負け犬の遠吠えですけどね。
そんなわけで、そろそろ内容に入ろうと思います。
ざっと言ってしまえば、就職活動する女子大生の物語…なんですけど、いろいろ絡んでくるんですね、これが。
藤崎可南子は大学四年で、就職活動の真っ最中…とは言うものの、まったく就職活動らしいことをしていない。義母の目を気にして、面接に行くと行って家を出ては、漫画喫茶で漫画を読み耽る日々。漫画が大好きなんだから、漫画の編集者になりたい。とりあえず、そんな希望はあったりする。しかし、周囲が情報を集めて奔走したり、面接やセミナーに忙しいのに対して、可南子とその友人二人(砂子とニキ)の三人は、何処吹く風ってなもんで余裕っぷり…。いやいや、少しは焦ろうよ。
なんとなく試験を受けに行き、面接に行こうとして古本屋に寄ってしまうなんてことをくり返し、もちろん内定はゼロ。本命である出版社の面接も始まるのだが、何なんだ…という面接に出くわしたりもする。どうしたもんかね…。
というような就職活動を縦糸にしながら、横糸が様々に絡まりある。
政治家である父親が巻き起こす嵐、年の離れた書道家とのフェティッシュな恋、旅人と呼ばれる弟とのやり取り、呑気な友人たちのささやかな悩み…などなど、可南子を取り巻く状況はなんだか慌しい。
それでも可南子は、とりあえず出版社への就職を目指し、時には妄想力をフルスロットルにしながら、青春の日々を『格闘』していくのである…。
というようなストーリーですね。
抜群、というと言いすぎだけど、これが面白い小説なんです。
ストーリー自体は、本当にただ、内定を目指して就職活動する女子大生の青春といった感じなんだけど、どこか引き込まれてしまうのだ。
なんというか、微妙なリアリティの欠如が、僕としては寧ろリアル、という感じでしょうか?
例えば、弟のことを旅人と呼んでみたり、時代がかった古風な語り口の可南子とか、おじいちゃんの書道家とフェティッシュな恋愛をしているところとか、どこかずれているところが、逆にぴったりはまっているようなそんな感じがして、まあ不思議な小説でした。
砂子とニキという二人の友人も、まあよくもそこまでのんびりできるもので、という感じで、その三人での掛け合いっていうのも面白いものでした。
正直、一体どこが魅力なのかという点をうまく指摘できない小説なんだけど、読んでみるとグイグイ引っ張られていくし、どんどん読めるし、登場人物は誰もが面白いし、特別ストーリーがあるわけでもないんだけど、でもドタバタで面白いな、とまあそんな印象が残る作品ですね。
解説もなんと重松清氏ですしね。すごいものです。
新人賞を獲っての受賞ではないという、日本では結構珍しい形のデビューだけど、デビュー作の段階でこれだけ面白かったのだから、それはデビューさせるでしょう、という感じですね。まあその辺の経緯はよく知りませんけど。
僕は就職活動も面接もしたことがないのでそれらについてよく知らないのだけど、でも本作に出てくる、K談社と集A社の面接についての描写はかなり面白いですね。全部が全部そうじゃないんだろうけど、結構面接って言うのも適当だな、と思いました。それとも、著者が女性だからというのもあるのかもしれませんけど…。タイトルの由来もなかなか最高です。
ものすごいオススメっていうことはないんですけど、でも読んだら絶対に誰もがはまるんじゃないかっていう作品です。読んでみてはどうでしょうか?

三浦しをん「格闘する者に○」


格闘する者に○文庫

格闘する者に○文庫

P.S.ししゃもさんへ

今日はホントにすいません。ホントに気にしないで下さいよ。話の内容とは全然関係ないんですから。僕的に、11:30までに本を読み終わらないと、感想を書くのに厳しいんですけど、今日は読み終わったのが12時なんで、大忙しですよ…、ってこんなこと言うと逆にこっちの方が気になってしまうかもしれませんけど(笑)。そんなわけで、またどうぞ。いつでもってわけにはいかないですけど。
 

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格闘する者に○ (新潮文庫)三浦 しをん新潮社このアイテムの詳細を見る 今回は、三浦しをん『格闘する者に○』を紹介します。著者の経験をもとにマイペースに過ごす女子大生可南子が漫画の編集者になるために..
三浦しをん『格闘する者に○』【itchy1976の日記】 at 2010年05月01日 14:48
この記事へのコメント
こんばんは。またお邪魔します。

昨夜、この本を読みました。三浦さんの語りは、おもしろいですね。
この本がデビュー作でしたか。しかも、24歳! 凄すぎますよ。
就職活動は、私も殆ど縁がありませんでしたが、氷河期と言われたこの時期の女子学生は必死だったのでしょうね。

タイトルが、本当に可笑しいですよね。天下のK談社が、そんな大ミスをして、果たして許されるの?の世界でしょう。
私の友人で読売新聞を「どくばい」新聞と読んで、失笑を買った人がいますが、彼女はただの高校生だったので「モノを知らな過ぎる」位で済みましたが、こちらは…。

紆余曲折を経て、それでも内定が取れないところは残念でしたが、三浦さんはカラッと明るく「まぁ、そんなものよ!」と流していらっしゃって、逆に新しさを感じました。

跡継ぎ問題や家庭のゴタゴタなども上手に交えて、物語を作るのが本当に達者な方だと感心しました。西園寺さんとの恋愛も可笑しいですね。いただいた掛け軸に「脚」という文字が書かれていたことにも、充分笑えました。もしかしたら永遠の別離になってしまうかも知れない悲しみが深まりつつあるところで、すっとすくい上げる技法も、すばらしいと思いました。

肝心の(?)重松氏の解説ですが

 >我輩は女子大生である。内定先はまだない。

この「語り」も愉快ですが、氏はさすがに慧眼の持ち主です。
「たいせつなもの」を敢えて書かずに残し、ユーモアに包み、ツッコミをまぶして、一歩退いて距離を取るという三浦さんの作風について彼女の【含羞】という言葉を使っています。或いは【矜持】と呼んでもいいのかも知れない、と。

この解説を読んでから、今まで「ちょっと軽すぎるかも…」と思っていた彼女の作品の隠れた魅力に気づきました。次は何を読もうか?と、迷っています。

清水さんの『国語入試問題必勝法』は、私もかなり前に読んだ記憶はありますが、内容は思い出せません。確か、子供の受験の頃でしょうか?、タイトルに惹かれて買ったものです。紛らわしいタイトルは、ホント困ります(笑)。私も、国語が大の苦手の学生でしたので、何か改善のヒントが…と、期待していたのかも知れません。純粋にゲラゲラ笑いながら読んでしまった覚えはあります。
Posted by dradonworld at 2006年10月06日 23:10
こんばんわです。

この作品は、デビュー作にしては結構レベル高いですよね。なんか、読んでいくと、掴み所のない小説だな、なんて思うんだけど、でもずいずい読んじゃうみたいな、そんな感じはありました。
就職活動は…僕は、もししてたとしたらもう大変なことになってたでしょうね。無理ですよ、ホント。面接とか、何喋ればいいっていうんでしょうね。想像するだけで、拷問ですね。

三浦しをんは、とにかく漫画が好きみたいで、それはこの小説にもよく出てますよね。主人公が、就活をさぼって漫画喫茶にいたり、面接の途中の古本屋で漫画を大量に買ったみたりしてますからね。ストーリー自体も、まあ言ってみれば漫画チックだ、と言えないこともないですよね。そういえば、直木賞を受賞した「まほろ市駅前便利屋」(あぁ、タイトルが正確に思い出せない。そんな感じのやつ)もかなり漫画チックでしたね。そうじゃない作品もあるんでしょうけど、一つのスタンスではあるんでしょうね。

あの後継ぎの話は、かなり意外でしたね、僕には。なんていうか、そんな展開になるんだ、みたいに思いました。まさか、実際の体験談ってことはないですよね…。っていうか、西園寺さんとの恋愛こそ、実際の体験談だったら怖いですけど。

そういえば、僕がいる本屋が入っているグループ(説明しづらいけどそういうものがあるんです)の中のある書店が、三浦しをんを招いてサイン会をするようです。手伝いに来ませんか、みたいなメールが来てましたが、まあいいかって思ってしまいましたけど(笑)

重松清が解説っていうのも豪華ですよね。
他人の解説を書くときは、まあやっぱりそれなりに持ち上げたことを書くものなんだろうけど、でも三浦しをんに関してはやはり慧眼と言っていいですよね。多彩な作品を生み出して、評価もされてきたわけですから。さすがです。

「国語入試問題必勝法」は、ホント紛らわしいですよね。同じく清水義範の本で「蕎麦ときしめん」という本があるんだけど、著者自身が、この本を本屋の料理コーナーで見つけた、みたいなことをあとがきで書いていました。ホントかどうかはわかりませんが。
表題作の「国語〜」は、ホントに使えそうなテクニックが書いてあって、少なくても高校時代にこの本を読んでたら、実際参考にしてたかもしれません。まあ、純粋に面白い作品でしたね。

読みたい本がたくさんありすぎて、本当に困りますね(実際は困ってませんが 笑)。時間がとにかくないです。一ヶ月ぐらい仕事を休んで本を読み続けたい気もしますが…、それはそれで廃人になりそうな気もします。
Posted by 通りすがり at 2006年10月07日 02:35