2006年04月17日

日記書いてる場合じゃねぇよ(安野モヨコ)

漫画家って、どう考えても尋常な職業ではない。
はっきりいって、どうかしちゃっているのではないだろうか…。
…なんて言って漫画家&漫画家ファン&漫画ファンにボコボコにされるのも嫌なんで、早速いい訳。
仕事しすぎだろ、とわたくし思うわけです。
例えば、小説家っていうのは、まあ基本的に物語を考えて文章を書けばいいわけです。映画でも、脚本は脚本家、衣装は照明は小道具は大道具はCGは…なんてそれぞれ専門がいるわけで、分業だからまあそれほど負担もない、と。
でも漫画家って…全部やらにゃならんのですよ!
アシスタントがいらっしゃるでしょう…とかそういうレベルじゃなかでしょう。まず物語作って、んでネームだとか下絵だとか(この辺のコミック的専門用語はおらにはわからんかったのだが)まあそんなの書いて、んでペン入れ。衣装も小道具も大道具も照明もカット割りも、とにかくなんでもかんでも自分で決めて自分で描かにゃならん。んで、人気作家になると、毎週締め切りがあったりするわけで…。
いやいや、人間がやることですかそれ。もうなんていうかこんなこと言うと非難満載のような気がするけど、今の日本で漫画家になるって言ったら、本が売れなさ過ぎて漫画家を廃業して病むか、本が売れすぎて忙しすぎて人間を廃業して病むかのどっちかしか選択肢がないんじゃないだろうか…。
特に僕が思うのはコナン、というか青山剛昌。僕はミステリが好きなんで、もちろんコナンとか金田一とか好きなんだけど、あれだけ良質のミステリ(トリックだけでなく、話の持っていきかたとか解決の仕方とか、それが後々の物語と絡んでくるところとか!)を、毎週の連載でポンポン書けるなんて、あーきっと青山剛昌は人間ではないに違いないとか、同じ能力を持った青山クローンが3体ぐらいいるに違いないとかもはやそんな風に考えてしまうくらい、とにかくすごいなぁと思うわけです。人間業ですか、アレあ?それとも、漫画家ってのは、ガンダムのニュータイプみたいに(って知ってる風に書いてるけど、ガンダム見たことない)、新人類的な人たちなのですか?
すごいです。すごすぎます。
少し前までバイト先に、漫画家志望の女子がいて、その人に森博嗣の「スカイクロラ」のPOPを作ってもらったりしたのだけど(これが超キレイ!)、最近漫画家のアシスタントになったとかで、いや頑張って欲しいものだけど、僕の中の貧困な『漫画家イメージ』によると、漫画家ってのは恐ろしく悲惨な生活をしていて、締め切りギリギリに原稿を上げてくるのに、さらに超スピードで背景とか描いてとか、家に帰れなくて泊まりこみで風呂にも入れないしファッションとか化粧とか何それみたいな…まあそんなイメージなんですけど、とにかく人間廃業するのだけは、いくら仕事が楽しくても、それだけは止めて欲しいなぁ、と思ってみたり。
日本の出版物の3分の1は漫画だそうで、日本は世界に誇る(誇れるかどうかは人次第だろうけど)漫画大国なんだけど、それだけに個々人の技術が上がりすぎて、最近では新人がなかなかデビューできない(当然これくらいは持っててほしい、という技術を、新人はなかなか身に付けられないとかで)という世界らしく、新人賞が乱立して常に新人を受け入れている文芸の世界とは違うんだなぁ、と改めて厳しい世界なんだろうなと思ってみたりしました。
僕は、ちゃんと読んでる(毎回買ってる)コミックはコナン君だけで、最近バイト先の人に金田一を借りて読み、あと友達んちでカイジを読んだりするくらいだけど(しかし、カイジってメチャクチャ面白いけど、メチャクチャ絵下手だよなぁ。面白いから全然いいんだけど)、でも漫画家って、異常だけどすごい人だなって、よく知らないけど尊敬してたりしています。ジブリとか甲殻機動隊とかそういう超メジャー級の日本アニメが海外で評価されたりとかしてて、あとドラゴンボールとかドラえもんとか、もはや国民的とも言えるようなアニメも海外で人気だったりするわけだけど、これからも、とにかく底辺の広い日本の漫画業界っていうのを、盛り立てていってくれたらいいなぁ、なんて人事のように思ってみました。
そんなわけで内容に入ります。
まあ内容ったって、日記なんですけどね。
やっぱ、漫画家って尋常ぢゃないスケジュールで生きてますね。
僕も学生の頃は、徹夜とかよくしてたけど、この日記にもよく徹夜したって記述があります。もちろん、仕事をやらずに溜め込んでるのも原因なんだろうけど、そうでなくてもキツキツの過密すぎだろって突っ込みたくなるような、そんな無茶苦茶な仕事っぷりです。表紙カバーの裏っかわに、恐らく安野モヨコ本人のスケジュール表が印刷されてるんだけど、遊びの予定もたっぷりで、その中に締め切りの文字もたっぷり。いやー、精力的な生き方をしてるな、と思いました。素晴らしい。
尋常ではない仕事スケジュールという意味で森博嗣を思い出したけど(森博嗣も毎月少なくても10個くらいの締め切りがあると思う。しかもそれをすべて前倒しで終わらせてしまって、締め切り遅延は一度もないという優秀さ。素晴らしい)、漫画家ってそれ以上かもしれないと思いました。
だって日記には常に、ネーム描いた下絵描いたペン入れしたカラー描いたなんてことが書いてあるんだけど、えっ、それではあなたは、いつ物語を考えているんですか…なんて思ってみたり。描きながら考えてるのかなぁ。森博嗣は、書きながら考えるらしいけど…やっぱ、皆さん天才なのですね。羨ましい限りです。
そうそう、過密スケジュールと言えば、鈴木成一です…って知りませんよね。装丁家です。装丁家というのは、本の表紙のデザインなんかをする職業で、本作の装丁も鈴木成一なんですけど、いやこの人、ありえないですよ。年間、500冊くらい装丁やるらしいです。もちろん、仕事のレベルとしては大小あるだろうけど、500冊ですよ!しかも文芸作品だったらもちろんちゃんと読んでイメージを固めるわけです。
試しにブックオフに行って、文芸でもビジネス書でも、これ結構いい表紙ぢゃないって奴を選んで、装丁家をチェックしてみてください。かなりの確率で、装丁家・鈴木成一って書いてあると思います。この人も、信じられない仕事量です。ありえない。文庫の担当をやっていて、あと自分で本を読んでいて、常に装丁誰かなぁって気にしてるんだけど、やっぱり鈴木成一率が高い!みんな仕事するなぁ…。
そうそう、とりあえず本作の出来た経緯を。安野モヨコは漫画家で、んで時折現実逃避をしたくなる。そんな時、HPに日記を書く。それをまとめたものが本作です。
安野モヨコの経歴を少し書いてみましょう。
1971年3月26日生まれ。誕生日は僕と3日違いです(僕の誕生日は3月29日…って誰も聞いてねぇか)。
小学校3年の時、漫画家になることを決意。机を運んでる時にふとひらめいたらしい…なんだそりゃ。
高校三年で漫画家デビュー。以後、沢山コミックを発表。
スゲ―もんだな。小学校3年の時の夢なんて、ほんと野球選手とかケーキ屋とか、後から考えれば叶える気あったんかよ!って突っ込みたくなるようなものばっかだったけど(自分がどんな夢を持ってたのかさっぱり覚えてないところも突っ込みたいところだけど)、それを高校三年で叶えちゃうなんて、やっぱすごいもんですね。
さーて、なんとなく無駄な脱線が続いたので内容に話を戻しましょう。
漫画描いてる締め切りヤバイ!って話ももちろん沢山あるし、アシスタントがどうこうで、仕事場で何が流行っててなんてのも沢山書いてあるけど、それ以上に書いてあるのが、『安野モヨコのギャル道』みたいな感じで、まだまだギャルとして生きていたいのに、わたくし漫画家なので忙しいし徹夜も多いで、ギャル道から遠いわ。いや、そんなんじゃダメなのよ、エステにも行くしマニキュアもするし、ダイエットだってあのその子スタイルでびっちりよ!あーでも美味しい食べ物食べすぎだし漫画読みすぎだし運動不足だし、太るしギャルからまた遠ざかるぜ〜(ため息)みたいな、そんな葛藤の日々が書かれていて、同じ年頃の働く女性が読んだら、結構面白いのかもなぁ、と思ってみました。
なんていうか内容は、ほんとタイトルの「日記書いてる場合じゃねぇよ」に集約される感じで、漫画家って大変だわさってのが、ビシビシ伝わってきます。
さて本作は、日記だけだとお楽しみいただけないかもしれないという安野モヨコの不安のお陰で、安野モヨコのイラストも沢山収録されています(書き下ろしじゃないけど。今までいろんな雑誌なんかに載った奴を集めたって感じかな)。
安野モヨコの描く女性って結構キレイだけど、特に髪がショートの女性がいいです!なんかグッとくるものがあります。
あと安野モヨコの絵の、何て言ったらいいのかなぁ、『死んでるような「生きた」目』がすごくいいですね。『死んでるような目』じゃないんです。そうじゃなくて、生きてるんだけど、でも死んでるような目。表現が難しいけど、そんな感じです。なんていうか、ビカビカ超眩しく輝く活き活きした目って、ちょっと気後れしちゃうというか、いやーん暗い僕をそんな明るさで照らさないで〜、みたいなそんな気分になるんですけど、なんか底がないような安野モヨコの描く目は、見つめられてもちゃんと見据えることができそうっていうか、なんかいい感じなのです。なんとなく伝わるかしら…。
とはいえ、まあ安野モヨコのコミックを読もうとは思わないわけだけど、でもいい絵だなぁ、と思いました。
どちらかというと、やっぱり女性が読んで面白い本でしょうね。そこまでオススメというわけでもないけど、読んで見ても面白いと思います。

安野モヨコ「日記書いてる場合じゃねぇよ」


日記書いてる場合じゃねぇよハード

日記書いてる場合じゃねぇよハード
 

この記事へのトラックバックURL

http://blogs.dion.ne.jp/white_night/tb.cgi/3239719
この記事へのコメント
安野モヨコさんは、独特の絵で、何度か読んだことはありますが、絵のギャルっぽいのに反して、話は結構ディープなんですよね。

拒食症についてのマンガで(題名が正確に出てこないけど)脂肪を着てるみたいな題で、題名の命名力もすごいものがあるなって思った覚えバありますよ。
印象に残る話なんですよ。

忙しいほど仕事があるっているのは、羨ましいような、自分では受け入れられないような。
本当にいつ気を緩めてるのでしょうね。遊びながらでも、あ、これネタになるじゃんとか考えてしまったりしないのでしょうか?
日本のマンガは本当におもしろいですよ。
わたしの好きなマンガは槙村 さとるさんの「Do Da Dancin'」です。
Posted by さくらみかん at 2006年04月17日 12:41
やっぱ女性は読んでるんですね。実は本作も、この人確かNANA描いてる人だよなぁ…なんていう無茶苦茶な知識から手にとって買ってみたのでした(略歴を見て違うということに気づいて、びっくりした。あちらは、矢沢あいでしたね、そういえば)。

略歴を見ると、「脂肪という名の服を着て」っていうのがありますね。これですねたぶん。確かに、女性コミックのタイトルとしてはすさまじいけど、でもズバッって感じですね。

ディープな話を描いているからと言ってディープな体験が多いわけじゃない、って本作には書いてありましたね。まあそれはそうですけど、ホント、いつ気分転換してるのか不明です。まあ、漫画を描くのがすごい好きで楽しいらしいから、それはそれでやってけるのかもだけど…。

槙村さとるって名前も、そのコミックもわからん…本屋で働いてるのになぁ。もし漫画喫茶に行くようなことがあれば探してみます。
Posted by 通りすがり at 2006年04月17日 13:25