懐かしいですね。
慌てない慌てない、一休み一休み。
懐かしいですね。
アニメでやってた一休さんを、子供の頃見ていた記憶がありますね。「この橋渡るべからず」とか「屏風の虎を捕まえる」とかそういうとんちを、座禅を組んで頭に人差し指でぐりぐりやって、ひらめいたなんてやってるあの一休さんは、なかなか可愛いもんでしたね。
歴史のことはまったく知らないのですが、一休さんはどうやら実在の人物のようですね。あのアニメの通り、知恵者だったかどうかは知らないけれども、そういう坊さんはいたんでしょう。
最近、IQサプリという番組をよく見るのですが、なかなか問題が解けないですね。すぐわかる問題もあるのだけど、よくわかるなこんな問題、と思うような問題が多くて、僕は頭が固いななんて思ったりします。
一休さんのとんちも、IQサプリの問題のようなもので、いかに頭を柔らかくして発想するかっていうことで、共通点があるような気がしますね。頭の柔らかさは羨ましい限りです。
さて、何を書こうかあまり思いつかないので、著者である鯨統一郎の話を少し書きましょう。
鯨統一郎と言えば、覆面作家で有名ですね。これは、経歴を一切公表しない作家のことで、他にも舞城王太郎や殊能将之なんかが有名ではないでしょうか。
鯨統一郎と言えば、デビュー作「邪馬台国はどこですか?」で注目を浴びました。僕は書店員で文庫担当なのですが、これは売れましたね、ホントに。僕も読んだのですが、あるバーで交わされる歴史談義から、日本の歴史の謎が明かされるという内容で、歴史にまったく興味のない僕でも十分面白く読めてしまう本で、かなり面白いですね。
鯨統一郎はそういう風に、作中で歴史に新たな解釈を与えるというやり方を多くしていて、その新解釈を読むと、それが正しいのかもしれないという風に感じてしまいます。一休シリーズの「金閣寺に密室」でも、一休さんのとんちとして知られるものに新しい解釈を次々に与えていたし、「北京原人の日」でも陸軍や北京原人の骨に関する歴史上の謎に新たな解釈を与えていました。
そう考えると、京極夏彦とも通ずるところがあるかもしれない、と思いました。京極夏彦も、自作の中で、民俗学に関する新たな解釈を次々と打ち出して、それが、民俗学の研究者にも影響を与えているというような話をどこかで読んだことがあります。在野で、しかも小説という形式を通じて学界に何らかの影響を与えてしまうという点で似ているように思うし、それはすごいことだな、と思います。
そんなわけで、一休シリーズ第二弾。前作は確か長編だったけど、本作は連作の短編集です。
物語の大きな流れはこうです。京の知恵者として知られる建仁寺の小坊主一休。同じ寺に寄宿する少女茜の両親を捜すため、侍の新右衛門と三人で旅に出ることにする、という感じです。その道中で待ち受ける様々な謎を、一休が見事に解き明かす、とこういう感じです。また、謎解きに際してそれを妨害したいと願う人が、「これこれができたらこうしてやろう」という難問を出してきます。それを一休が見事に解く、というとんちのおまけもついています。
「難波・明の景色」
宿を借りようとした寺で一騒動。なんでも、死者の弔いをしたいのだが、その死体には首がなく、寺としては本人かどうかもわからないので断りたい、という問答のようだ。一人の女子を巡る決闘の末に亡くなったのだが、首のありかを一休は考える。謎の解明に一休に科される難問は、明と交流のある部下に、明の景色を見せよ、というもの。
「大和・栗鼠の長屋」
宿を借りる寺でまた一騒動。なんでも住職が、外から誰も入ることの出来ないお堂の中で、首をつって死んでいたのだ。直前まで住職と話をしていた女性が疑われるのだが…。一休に科せられる難問は、つっかい棒を半分に切れ。ただし、切った後もつっかい棒として使えるように、というもの。
「伊勢・魔除けの札」
宿を借りる寺でまた一騒動。寺の住職に相談をしていた女性の話によれば、村に突然現れた美貌で記憶を失った女性が、男どもを誑かしている、ということだった。なんでも、地震が来ることを予知したり、仏像が盗まれることを知らせたりと、予知能力があるとのことで、それを信じきっているもの旦那が日参しているのだと。なんとか目を覚まさせて欲しい、とのこと。一休への難問は、部屋中に張られたお札を、紙一枚で見えなくする、というもの。
「尾張・鬼の棲み家」
今回は、泊めてもらう寺のあてがない。仕方なく、近くにあった民家らしき家に泊めてもらうことに。黒い家と白い家の二軒あり、近い白い家に入る。幸いにも誰も人はいなかった。しかし翌朝目覚めてみると、昨日まではあったはずの黒い家が忽然と消えている。一体どうしてだ…。一休に科せられる難問は、筆に一切手を触れることなく書を書け、というもの。
「駿河・広い庭」
宿を借りる寺でまた一騒動。近くの家で人が死んだようなのだが、隙間一つない建物の中で、首に毒針を刺して死んでいたのだという。自害に間違いないだろうと思われたが、そこの主人がおかしいと言ってくる。自害するような理由はないと…。一休に科せられる難問は、この狭い庭を広くしろ、というもの。
「伊豆・鰻の寝床」
宿を借りる寺でまた一騒動。寺の住職に相談していた女性によると、浜辺に建っていた家が一晩で消えてしまったという。そこにいたはずの旦那もいなくなってしまって、どうしていいか途方にくれているとのこと…。一休に科せられた難問は、畳の上を歩かずに、奥の部屋の襖を開けろ、というもの。
「相模・双子の函」
宿を借りる寺でまた一騒動。住職の耳に、地主が亡くなったとの知らせ。しかも悪いことに、地主の息子で、大分昔に勘当したはずの弟が、遺産目当てか戻ってきているとのこと。なんと息子は双子なのだという。しばらくすると、その悪い弟の方が死んだという知らせが入るのだが…。一休に科せられる難問は、二つある箱のうちどちらに胡椒が入っているか、箱を開けずに当てろというもの。
「武蔵・猫と草履」
さて、茜の両親探しの旅もいよいよ大詰め。宿を借りる寺で出会った住職は、どうにもうろたえた様子。近づいてはならないという建物もあるらしく、どこか怪しい。その建物にはなんと…。一休に科せられた難問は、禅の公案に答え続けよというもの。猫と草履の公案の解釈は、なるほど、という感じ。そして、全編を貫く大仕掛けも待ってます。
前作「金閣寺の密室」は、歴史的な出来事が多かった気がするけど、本作はどちらかというとミステリ色の強い作品で、どちらがいいということはないけど、歴史が好きで鯨統一郎を読んでいるという人にはあまり向かないかもしれません。
しかしなんと言っても、本作は読みやすい。僕はたぶん、普通の本を読む1.5倍くらいのスピードで読めたような気がします。それくらい、サクサク読めます。テンポもいいし、三人の掛け合いも面白いので、すんなり読めるのだと思います。
軽く読める作品を探している人にはかなりお勧めです。読んでみてください。
鯨統一郎「とんち探偵一休さん・謎解き道中」

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