2006年09月19日

結婚なんてしたくない(黒田研二)

「おかしな話だと思いませんか?普通は、なんらかの行動を起こしたときに、その理由を訊かれるものでしょう?『どうしてピアノを習い始めたの?』とか『どうしてアメリカに行こうと思ったの?』とか。なにかをすることに理由はあるけど、なにもしないことに理由なんてないと思いません?それなのに、結婚の場合は違うんです。『どうして結婚するの?』とは絶対に訊かない。いつだって、『どうして結婚しないの?』なんです」

そうだよなぁ、と思う。これは、日本だけだろうか。欧米とかアジア各国とかどうなんだろう。
と不思議に思う。
確かに、結婚しないことを責められることは、どう考えてもおかしいと思う。おかしいと思いながらも、誰もがその評価を気にしている。別に、したくてできないというわけでもないのに、さも何か欠点でもあるかのように言われるのだろう。変な世の中である。
負け犬、なんて言葉が一時期流行った。確か、30歳未婚女性のことを言うんだったような気がするけど、それがどうしたというのだろう、と僕なんかは思ってしまう。結婚したいのに出来ない人は可哀相だと思うけど、したくないのにしろといわれる人もまた可哀相だな、と思う。
僕自身は、今の時点では結婚はしたくないと思う。そういう意味では、本作の登場人物と非常に似ていると思う。
結婚することで自由がなくなるのが嫌だ、と多くの人はいうかもしれない。僕の場合、まあそういう理由もなくはないけど、それ以上に、責任が重くなるのが怖い、というのが大きい。誰かと人生を共有するという責任感に、ちょっと耐えられないかな、と思うのだ。まあ、とにかく責任というやつが苦手なのだ。ダメ男ですな。
もちろん、誰かと常に繋がっていられる、というのはいいものなのかもしれない。もう一人きりでいることに慣れすぎてしまっているのでなんともいえないけど、年を重ねる毎に、孤独感というものは強くなっていくのかもしれない。孤独感を埋めるために結婚をする、というのもおかしな話のような気もするが、まあそういう決断もきっとあることだろう。
僕としては、結婚だとか離婚だとか、そういったことがもっと重くない社会がいいな、と思う。軽々しく結婚したり軽がるしく離婚したい、というわけではない。そういう、当人同士の気持ちの問題ではなく、周囲の扱い方の問題だ。
つまり、結婚すれば周囲は幸せだと見るし、結婚しなければ周囲は不幸せだと見る。結婚をすれば成功者で、結婚できないのは欠陥があるからだ、と見る。そうではない社会だったらいいな、ということだ。それなら僕も、もう少し結婚について考えてもいいと思う。なんというか今の風潮では、あまり結婚したいという気にならないのである。
最近は、晩婚化が進んでいるだろうし(たぶん)、そもそも格差社会の中にあって、結婚できない人口が増えてきたことだろう(僕もどちらかと言えばその人種だろう)。少しずつではあるが、結婚というものに対する意味が変わっていっているのかもしれない。
それでも、まだまだ結婚への幻想は根強いはずだ。特に田舎ではそうだろう。孫の顔が見たい、なんて、僕からすればもう死語みたいなものだけど、実際にはまだまだ健在なんだろう。なんというか、自由ばかり追い求めるわけにはいかないとはいえ、不思議な世の中だよなぁ、と思う次第である。
というわけで、そろそろ内容に入ろうと思います。
本作は、5人の男がそれぞれ主人公となって話が進んでいきます。5人が5人とも、いろいろな事情があって結婚はしたくない、と考えている人達です。
佐古翔は、女性をナンパしてセックスにまで持ち込む、その過程を、人生最大の娯楽だと言ってのける男だ。既に30歳半ばで、昔ほどのナンパテクはなくなっているものの、まだまだ遊び足りないと思っている。今日も一人ナンパして、今から後略しようと思っているところだ。会話も悪くない、車にも乗せたし、後は家まで連れ込むだけだ…。
しかし、自宅に着くと予想もしないことが。なんと、彼の家の前に女の子が一人寝転んでいる。死んでいるわけではなさそうだが、誰だこの子供は?女の子が持っていたメモには、「お忘れかもしれませんが、彼女はあなたの子供です。しばらくの間、預かっていただけますでしょうか?」とある。
俺の子供だと?そんなバカな?過去に関係のあった女との子供?そうなのか?
とりあえず、連れてきた女は帰ってしまうし、女の子を放り出すわけにもいかないわけで、家に上げることにした。なんの因果か、しばらく女の子を預かるハメになってしまった。まじかよ…。
藤江克実は、アニメオタクだ。「電撃ナイト☆ミスティ」というアニメの春風うららというキャラクターにぞっこんだ。もう彼女以外のことなどどうでもいい。彼女以外に愛する人はいないという、筋金入りのマニアである。
そんな彼は、今探しているものがある。ナンバー23と呼んでいる、等身大のフィギュアだ。ずっと探しているのだけど、全然見つからない。その熱中ぶりで、ミスティファンの間でも彼は有名になっていた。
そんなある日、ミスティ仲間のショージから、ネットオークションにすごいものが出てるよ、との情報。早速見てみると、なんとそこにはあの探し求めていたナンバー23が!これはなんとしても落とすしかないのだが、このにゃあというハンドルネームの人が引かない。あぁ、どうしよう。このままじゃ競り落とせない…。
蒲生要は、ジムのインストラクターをしている。何故か、おばさん連中にはモテるのだが。
はぁ。
ため息も出るというものだ。何せ彼は、同性愛者なのだから。それは、周囲には言えない。言えるわけがない。絶対に隠さなくてはならない。
しかし周囲は、結婚どころか浮いた話一つない彼に、なんとか話を持ってこようとする。その度に、言い訳を考えなくてはならなくなる。
どうしてこんなに生きずらいのだろう。異性を好きになれないというだけで、どうしてこんなに苦労しなくてはならないのだろう…。
真鍋聡士は小さな焼き鳥屋の主人だ。最近雑誌に掲載されたとかで、やたらと忙しい。迷惑な客もチラホラやってきてうっとおしい。しかし、自分しかいないわけだから、やるしかない。
そんなある日、父親が倒れたという電話を受ける。手術は成功したらしいが、東京の病院へ行った方がいいという。でもねぇ…と逡巡する母親は、一人暮らしをしたことのない真鍋を置いて東京に行っても大丈夫なものか、心配している。何をバカなことを言っているんだ、と真鍋は母親を送り出すのだが、予想は見事に当たり、とんでもないことになっていく…。
相馬浩文は製薬会社のMRだ。付き合っている彼女はいる。ついこの間デートの終わりに、結婚を切り出されてしまった。彼女のことは大好きだし大切にも思っているけど、でも結婚となると踏み切れない…。
その日、コンタクトレンズを落としたと言って困っている女性を見つける。モデルかと思うような美人だ。いろいろあって食事をしに行ったりするようになるのだが、付き合っている彼女のこともある。俺はどうすればいいんだろう…。
というような話です。
初めは、結婚に対する考え方が違う5人の人間を並列に並べて平凡に終わるストーリーかと思ったのだけど、なるほどさすがというか、まさかあんな展開になるとは思わなかった、というような話でした。いつも思うけど、黒田研二、お見事。
5人の中では、真鍋と相馬に割と共感できるかな、と思います。真鍋の、別に寂しいと思ったことはない、というのも、相馬の、どうしても結婚に踏み切れない、というのも、結構分かるなぁ、と思いながら読んでいました。あとは、蒲生みたいな同性愛者はやっぱ大変なんだろうな、ということですね。まあ、ここにはあまり共感できないというか賛同できないというか、まあ多少複雑な事情があるわけですが…。
結婚に対する考え方は、100人いれば100通りあるんじゃないかというくらい、やっぱ皆違うんだと思いますね。結婚したい人でも、それをなんとか掏り合わせながらやらないといけないし、結婚したくない人でも周囲に気を遣わなくてはならない。もういいかげんそういうのは止めませんか、って思うんだけどね。
でも、女性としてはやっぱり結婚というものは、ある意味でやはりプレッシャーなんだろうか。それこそ、負け犬だみたいに言われてしまうのだろうか。本作でも、相馬の彼女が、ちょっと結婚に焦っている感じがある。それは、自分の内側から出てきたものなのか、あるいは社会との掏り併せで出てきたものなのか、まあなんともいえないところだが、女性というのはまだまだ大変だな、と思うわけである。
本作では、佐古の家にやってくる香澄という女の子が出てくるのだけど、この子がかなり可愛い。というか健気でいい。こういう子供なら、いいかもしれない。うーん、しかしだ、何であの母親からこんなに素晴らしい子供が育ったのかは謎なのだけど…。
読んでて、かなり楽しい話でした。共感できるかどうかという部分をとりあえず置いておいても、充分に楽しめるエンターテイメントだと思います。読んでみてください。

黒田研二「結婚なんてしたくない」


結婚なんてしたくないハード

結婚なんてしたくないハード
 

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リクルートの発表によりますと結婚式で仲人を立てる方は最近では4.6%しかいないそうで、仲人を立てる習慣は絶滅寸前と、コメントしています。
結婚式と仲人【徒然なるままに、翁覚書】 at 2006年10月17日 17:41