2005年01月15日

螢(麻耶雄嵩)

本格ミステリ界の重鎮、沈黙を破る。
まず著者の紹介をするべきだろうか。麻耶雄嵩と言えば本格ミステリ界では知らぬ者はいない。京都大学在学中にデビュー作「翼ある闇−メルカトル鮎最後の事件−」を発表し、本格ミステリ界に衝撃を与える。その古典的な舞台設定に斬新なアイデアをのせたその作品は作家や書評家に支持される。続く二作目「夏と冬の奏鳴曲」には、ミステリ界の誰もが衝撃を受け、麻耶雄嵩は本格ミステリの牽引車に登り詰める。その後何作か作品を発表し、そして「鴉」を発表後、長編としては本作「螢」まで七年間完全に沈黙していた。
その七年の沈黙を破り、本格ミステリの異端児が今年発表した新作がこの「螢」である。
舞台は、京都の山奥の奥の奥に聳え立つ「ファイアーフライ館」、つまり「螢館」である。そこは、加賀螢司という著名な音楽家だった男が建てた別荘だった。加賀は他7人のメンバーとともにオーケストラを組んでいて、そこでよく合宿を行っていた。
惨劇は突然起きた。
加賀はその「ファイアーフライ館」で、そのオーケストラ員を次々と殺害し、三日間部屋に籠もったまま自分の作曲した曲を聴き続け、「螢が止まらない」という謎の言葉を残して逮捕、その後衰弱死した。
しばらく廃墟と化していたその館を、佐世保という一山当てて大儲けした男が買った。佐世保はアキリーズクラブという、幽霊屋敷や廃墟を巡るサークルのOBで、その関係で今では夏合宿の場所として、加賀が殺人を犯して籠もり続けた期間合宿をすることが定番になっている。
今年もやってきたアキリーズのメンバー。だが今年は勝手が少し違う。前年、当時メンバーだった対馬つぐみという女性が、ジョージと名付けられた殺人鬼に殺されていたのだ。時折思い出すことになるその事実に少し悪くなる空気を振り切って、合宿は始まる。
そしてそんな中、第一の殺人が起こってしまう。とまどうメンバー。推理をし始める二人によって少しずつ真相に肉薄していくのだが・・・
雨降りしきる中、唯一の通路である橋が増水によって通れなくなる。電話も切られ、携帯も圏外。雨が止むまでその場から動けないし、誰も呼ぶことができない、というまさに「嵐の山荘もの」の定番のような設定の中で、メンバー達が過ごしていく話。
さすがは麻耶、という構成だった。なるほど、そうか、という感じ。
ただ、さすがに古臭い感は否めない。警察の介入することのない嵐の山荘もの。悪くはない。寧ろそうした話は好きだが、でもどこか現実離れしている感がある。
ストーリーはすっきりスマートでいいが、こじんまりまとまり過ぎているような気もして、七年の沈黙の割には、という感じがする。
しかしまあ、読者以外を騙すトリックが仕掛けられているとは誰も思わないだろう。そこはさすが、という感じがした。
伏線がかなり多く、再読しない俺としては少しもったいな作品ではある。いい作品は何度でも読み返してしまう、という人にはいいかもしれない。
何にしても、麻耶雄嵩が長編を出した、ということがいいことだ。

麻耶雄嵩「螢」


螢


 

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