2004年09月06日

メドゥサ、鏡をごらん(井上夢人)

まだ続くかなと思ってページをめくったら「解説」の文字が目に飛び込んできた。読み終わったときはそんな感じだった。
結末がない。ないというか読者に委ねられている。要するに合理的な解釈が与えられることなく物語が閉じてしまう。まるで輪っかのように。
未だにどういう話だったのかよくわからない。タイムとラベルか、記憶錯誤か、菜名子がおかしいのか。いろいろ考えたけど、どうも納得いかない。
でも別に面白くなかったかというとそうではない。読んでいてものすごく不安定にさせられる。怨念だとか幽霊だとかいわゆるそういう「ホラー」なんかとはまるで違う恐怖に満ちている。解決されないことがより不安定ではあるが、それも一つの作家の選択として間違っていないのかもしれない。
何を書いてもネタバレになりそうだけどあらすじを書くと、藤井陽造という作家が自らの体をコンクリート詰にして自殺した。傍らには「メドゥサを見た」という紙の入ったビンが見付かった。自殺の理由と藤井が生前書いていた小説の原稿を探そうと藤井の娘とその婚約者が奔走するが、その過程で多くの人の死に触れ、さらに不可思議な体験をしていくことになる・・・
あの麻耶雄嵩氏の傑作「夏と冬の奏鳴曲」を思い出す不安定さだ。世界が壊れていくというのはこういうことなんだろう。ミステリーともホラーともつかない作品だけど、ありきたりのホラーには飽き飽きしているという人にはいいかもしれない。

井上夢人「メドゥサ、鏡をごらん」


メドゥサ、鏡をごらん

メドゥサ、鏡をごらん講談社文庫
 

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