百鬼夜行−陰−(京極夏彦)
もし世の中に、京極作品の中で本作を一番初めに読んだ人がいるとしたら、その人にとってこの小説はかなり意味不明なものだっただろうと思う。
友達に、森博嗣のS&Mシリーズの「今はもうない」を一番初めに読んだというつわものがいるが、そういう感じだと思う。
この作品は、これまでのいわゆる<京極堂>シリーズといわれている作品、つまり「姑獲鳥の夏」「魍魎の匣」「狂骨の夢」「鉄鼠の檻」「絡新婦の理」「塗仏の宴」の作品に出てくる、今まで視点を獲得したことのなかった登場人物たち。いわば、「ストーリー上重要人物だが視点を獲得したことのない端役」という感じの登場人物。そうした彼らを主人公に据えた、著者初の短編集である(「塗仏の宴−宴の支度」は短編集だったかもしれないが、「−始末−」と合わせて一作品と認識しているので短編集ではないとします)。
だからこそ、これをはじめて読んだ人は、出てくる登場人物が誰なのかわからないし、その背景もさっぱりわからない(というかこの作品で描かれている部分こそ背景なのだが、初めて読んだ人間にそれがわかるはずもない)。だからある意味混乱するでしょう。
裏表紙には、「人が出合う「恐怖」の形を多様に描き出す十の怪異譚」と書かれているが、そうしたホラーだとか恐怖小説だとかいう範疇ではなく、これは紛れもなく<京極堂>シリーズの番外編であるし、描かれなかったわけではないが、その彼らの過去を彼らの視点で再度認識するための物語だと言えると思う。
ただ、俺は人よりも感覚を詰めて<京極堂>シリーズを読んだと思うけど、それでも時折これが何の作品のどの登場人物だったのかわからないものもあった。
森博嗣と京極夏彦のそれぞれのシリーズを読んでいていつも思うのは、シリーズを一気に再読したいな、ということ。忘れかけてたり認識すらしていなかったシリーズ間の繋がりをきっと見出せると思うし、より楽しめるような気がする。
けど、再読するよりも読む本があるから仕方ない。
さて、短編集はいつも紹介が難しくて困るけど、今回は紹介しない。なぜなら、それぞれの短編を紹介するということは、その登場人物が出てくる作品の内容に触れなくてはいけないし、それは激しくめんどくさいから。
ただ、作品中なるほどと思える箇所があったので、それだけ紹介しようかと思います。
京極夏彦の作品は<妖怪>シリーズとも呼ばれていて、いつもよその作品に合った妖怪の解説が長々と書かれるわけです。今回さすがにそういうことはなかったけど、一編だけ、「鬼」に関する考察があって、なかなか面白かったです。
鬼を初め妖怪だとか神だとか幽霊だとかいろろいるわけだけど、それでは鬼固有の性質とはなんだろう、という話になります。角があることが鬼なのではないか、という男の問に対して、しばらく問答をした末、薫紫亭は「心を鬼にする」という言葉を引き合いに出します。
「心を鬼にし」て悪いことをする人はいないでしょう。大抵厳しい態度で誰かのためになることをするものです。それから考えれば、鬼というのは、やれば出来るけどなかなか出来ないことをやってのける、というのが固有の性質なんではないだろうか、と薫紫亭は言います。
不可能なことや奇跡を起こすのは神だけど、鬼はやろうと思えばできるけどなかなか出来ないことをあっさりやってしまう。だから鬼は人を喰うのだと。そういう、できるけどしたくないことをやってしまう存在のことを「鬼」と呼ぶようになったのだろう、と。
こんな感じの考察です。これを読んでいる時、京極夏彦はやはり頭がいいな、ということと、京極夏彦は本当に妖怪とか民俗とかが好きなんだな、と思います。
さて、今回の作品はそこまでお勧めはできません。もちろん悪くはありませんが、他の京極作品と比べてしまうと見劣りします。短編だから、長い作品を書く京極作品の中でもとっつきやすいだろう、と考えて本作を手に取るのは止めた方がいいと思います。シリーズを「宴」まで読み終えた人なら、それなりに楽しめると思います。
京極夏彦「百鬼夜行−陰−」
百鬼夜行―陰講談社ノベルス
Posted by white_night at 14:16
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本の中身は(2005年)
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お久しぶりです。
現在多忙を極めております。が、通学時間などを利用して読書は欠かさず続けています。
清涼院流水の「コズミック」「ジョーカー」を読了しました。
感想ページが見当たらなかったのでこちらに書かせていただきます。
読み終わったあとはもう「凄い!」しか感想が浮かば無かったですね。
もう言葉の神としか言いようが無いですね、ホントに。小説(流水大説でしたか)の中で明かされる謎だけではなく他にも言葉遊びが隠されていそうでいつかまたじっくり読み返したいです。これの続きの作品は19ボックスですか?清涼院流水も好きな作家の一人となりそうです。
今は京極夏彦の「百鬼夜行・陰」を読んでいます。
今回はシンプルに怪談話ですがやはり京極は良いですね。
しかしスガさんが感想に書かれているとおり、宴まで読んでいないと楽しめないかもしれませんね。結局春休みは40冊程度しか読めませんでした。まだまだですね。もっと読まねば!
それでは、また。
「コズミック」「ジョーカー」は、大分昔に読んだのであんまり記憶にはないですけど、そこまで絶賛ですか。それはすごいですね。僕は、この作家はすごいなとは思ったけど、作品自体のすごさみたいなものはなかなか分からなかったような気もします。無茶苦茶な話だな、と。
言葉遊びは、確かに清涼院流水の得意技ですからね。
続きが「19ボックス」というわけではないです、たぶん。「19ボックス」はそれはそれで別に趣向の凝らされた作品で、まあ意図するところをちゃんとは理解できてないと思うけど、まあそこそこ面白かったような気はします。
あと、文庫で全5巻の奴があるんだけど、名前忘れたなぁ。というわけで調べたけど、「カーニバル」というやつですね。読んだことはないけど。一応、JDCものの作品だった気がします。まあ探してもなかなか見つからないと思うけど。
百鬼夜行は、それまでの作品に出てきたキャラクターを主人公にした短編集でしたっけ?なんとなくだけど覚えてます。
僕はまあ相変わらずの読書ペースで、今年の読書冊数がもう少しで100冊に届きそうです。まあお互い、時間を見つけてなんとか読書をしましょう。
いや、もうキャラがいいですよ。龍宮とか九十九とか不知火翁とか。
なんとなく西尾維新も影響を受けているような気がします
そして、謎ですね。たしかスガさんはパズルを創作しているんでしたよね?
清涼院流水の作品を読んでいると「良くここまで謎を作れるなぁ」と感心しました。
やっぱり謎は解くよりも創る方が難しいのでしょうか?
だとすればやはり流水はすごいと思いますね。
まあ話自体は無茶苦茶ですけどね(笑)、その無茶苦茶加減が良いと思うのですよ。
ところで何で現実には名探偵は存在しないんでしょう?
存在してもいいと思うんですけどね。
「19」は別ですか。では続編は「カーニバル」ですかね?自分も調べてみます。文庫5冊か・・・長い道のりになりそうです。(笑)
百鬼夜行は読了しました。一人だけ誰だか分からなかったのですが、あとは全員わかりました。やはり関口は終わってますね。(笑)
次は「雨」を読むつもりです。探偵小説とあったのであの榎木津がなにをやらかしてくれるのか今から楽しみです。
もうすこしで100冊ってことはほぼ1日1冊ってことじゃないですか!
ああ羨ましい。そんなに読めたらいいなぁ。
いまのところ通学時間の2時間程度しか1日に読書に割けないので、もっと時間が欲しい今日この頃です。
舞城王太郎という作家が、「九十九十九」というタイトルの本を出してます。JDCトリビュートと言って、清涼院流水の世界を他の作家が借り受けて作品を書く、みたいなのが昔流行りました。西尾維新も、「ダブルダウン勘九朗」みたいな、JDCトリビュート作品を出してるし。まあそういうのを読んでも面白いかもです。
パズルと言ってもただのナンプレだけど、作るの自体はそこまで難しいというほどでもないですね。難しいのは、答えを一つにしなくてはいけない、という部分で、小説ならその辺はぼかせるから、やってやれないことはないのかな、と。でも、清涼院流水並になると、もう異常ですね。
僕が思うに、現実に名探偵が存在しないのは、名探偵であることのメリットがないからだろうな、と思います。メリットがあれば、我も我もと言って、雨後のたけのこのように現れてくるでしょう。
「雨」は確か榎木津が大暴れする話だった気がするけど、最高ですよ。榎木津のアホ満開、という感じです。
本は、無理矢理にでも時間を作ればいくらでも読めますよ。
まあ、かなり睡眠を無理して削ってると思うのだけど。
まあ気合です。
JDCトリビュートですか、それは興味深いですね。
舞城は「煙」を読みましたがパンクでぶっ飛んでるなぁと思いましたね。
西尾も書いているのですか、必ず読みます。
>>難しいのは、答えを一つにしなくてはいけない
なるほど。確かに答えが複数だと困りますね。
ただ、清涼院流水は答えは何でもいいみたいなことをしちゃうくらいですからやっぱり凄いですね。
>>名探偵であることのメリットがないから
それもそうですね。名が売れればそれだけ煩わしいし、それにたとえ事件を解いたとして報酬があるとは限らないし。しかも大抵の事件は警察でことが足りるものですしね。
榎木津礼次郎
天上天下唯我独尊という言葉がこれほど似合う男もいませんね。(笑)
もう神ですよ、神。まだ3分の1程度しか読めていないのですがコレは良いです。
そうですね、本は時間を作って読むようにします。気合ですね。
JDCトリビュートは、最近もうないみたいだけど、
一時期流行ってたはず。
他に誰が書いていたか知らないけど。
答えを一つにしなくていいなら、まあ大風呂敷を広げればいいだけだからね。
まあ、その大風呂敷を広げるっていうのも、それはそれで難しいのだけど。
清涼院流水の作品に(タイトルは忘れたけど)、「1000の密室で1000人を殺す」という<密室卿>の話があるんだけど、それももう無茶苦茶な大風呂敷だわな。
なんていうか、警察よりも素早く事件を解いてしまうような存在がいたら、警察を守ろうとする人間なら真っ先にその存在を消そうとするでしょうね。そこまでして、探偵をやるメリットは、まあないでしょう。
理系チックな文庫を二冊買いました。まあどうなりますか。
コズミックが密室卿のお話ですよ。その巨大風呂敷に私は感動しました。
そうですね、探偵って損な事ばかりですね。(笑)
最近よく<理系文庫>なる本が良くありますが、時間を作って手を出していきたいと思います。
こういう種類の本の需要があるっていうのはなんとなく嬉しいですね。
理系の本は森博嗣が「ミステリィ工作室」(感想ページにありませんでしたが読まれました?)のなかで絶賛していた、「数学的経験」を「雨」と同時並行で読んでいます。
ぎこちない日本語訳なので少し読みにくいですが、とても面白いです。
一読の価値ありです。時間のあるときにでも是非。
ああ、そうか。コズミックがそれでしたね。
もう大分記憶が怪しいです。
理系チックな文庫は、筑摩文庫が得意です。
気になる文庫が毎月発売されます。
「ミステリィ工作室」は、たぶん読んだはずです。
さすがに、かなり専門的な本だとついていくのが大変そうですが。
まず手に入れるところから努力しなくてはいけませんね。