2005年01月28日

ささらさや(加納朋子)

ささらさや 「ささら」は「佐々良」で 「さや」は「サヤ」
「佐々良」というのは舞台となる町の名前で、「サヤ」というのは主人公となる女性の名前です。いつもながら加納朋子は、語感のいい言葉を使ってきます。
連作短編集で、日常の謎を描く作者として大分定着してきたと思われる加納氏ですが、今回の作品もまた秀逸です。
始まりこそ、なんとも残酷な幕開けになります。なんと、大好きで仕方ない夫を、目の前で交通事故で失ってしまいます。
夫の忘れ形見である、わが子「ユウ坊」。か弱くお人よしで騙されやすい「サヤ」だけど、わが子を一人で守るためにしっかり生きていこう、と決意する。
と、そんな決意を失わせるかのように、「サヤ」にとっては嫌な出来事が周りで起こっていく。中でも、「ユウ坊」を死んだ夫の姉夫婦が引き取りたい、と言ってきて、その義父母を巻き込んだ攻勢から逃げるようにして、「サヤ」は親族の中で最も親切にしてくれた伯母が住んでいた「佐々良」という町に辿り着く。
夫は死してもなお「サヤ」のことが心配で仕方ない。
「馬鹿っサヤ」と言ってしまうくらい夫にとって「サヤ」は弱弱しく頼りなげで、そんな「サヤ」の身に何か起こる度に、夫は「サヤ」を助けようと・・・
誰かの身に乗り移る。
死んだ夫の姿を見ることのできる人というのが中にはいて(何故かサヤには見ることができない)、そういう人の体を一度だけ借りて「サヤ」に接触することができる。「サヤ」だけでは解決できないことに、死んだ夫が生者の体を借りて助けに行く、とそういう話です。
いつも思うけど、加納朋子の作品は優しい。白い画用紙の上に、大目の水で溶いた絵の具で絵を描いたかのように透明感がある。
つまり、下地の画用紙の白が透けて見えるように、加納氏の作品からは作者自身の優しさが透けて見えるような気がする。
「ユウ坊」と二人きりで始まった生活も、色々な出来事や時間を経て、いつしか「サヤ」の周りには、少し口は悪いけど大勢の頼もしい仲間達が集うようになっている。死んだ夫のことは忘れられないけど、大事な仲間が側にいる生活を「サヤ」自身頼もしく楽しく思い、夫もその姿を見て、自分の身の振り方を考える。
俺が読んでいてとてもいいなと思ったのは、途中から出てくる「エリカ」という女性です。「エリカ」が出てくるようになってから、物語は格段に面白くなったような気がします。
張り詰めた生活や気苦労の多い社会に疲れた時、怒りっぽくなってイライラして少しでも優しい気持ちになりたい時、静かで穏やかな自分だけの時間を最高の小説と共に過ごしたい時、そんな時にお勧めの小説であり、お勧めの作家です。

加納朋子「ささらさや」


ささらさや

ささらさや幻冬舎文庫
 

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