僕らは普段生きていて、実に様々なことに悩んで暮らししているものだ。些細なものから些細ではないものまでそれは多岐に渡り、また個人的に重要なものから社会的に重要なものまで幅広く存在するわけだが、まあしかし悩みはいつまでも尽きないものである。
それらについて、その悩みと対峙した段階であれこれと考えるのは非常に時間が掛かる。一つ一つにそれぞれ別の対応をしていたのでは、それこそ大変である。
僕はだから常に(とは言えないのだけど)、自分の中で捨てられるものと捨てられないものを出来る限り明確にしておこう、と考えているわけである。お金は捨てられるか、プライドは捨てられるか、魂は捨てられるか、みたいなことをまあいろいろ考えておくわけである。
いざ悩みに直面した場合、その悩みによって失われると想定されるものを列挙するわけだ。そうすれば、悩みに対峙するのは簡単だ。その悩みによって失われるものが、僕が捨ててもいいと思えるものであればその悩みは切ればいいし、捨てられないものを失うということであればその悩みを受け入れる。そういう判断を明確にするために、捨てられるか否かの基準は重要だ。
まあといったところで、あらゆる悩みをそれだけでバシバシと裁断できるようなら苦労はない。実際は、捨てられるものを失う時でも惜しくなったりすることはあるし、捨てられないものを失うことになってもその悩みと向き合わなくてはいけないこともある。そもそも、捨てられるかどうかを明確に出来ないものもたくさんあるわけで、結局悩みに対してはそこそこ悩むということになってしまうわけだ。
しかし、世の中には決断の早い人間というものはいるわけで、恐らくそういう人々はそういう判断を常にしているのだろうと思うのだ。直感でやっている人もいるのかもしれないけど。
最近見たニュースでこれはと思ったものが、夏川純の年齢詐称の話である。僕としては、誰の年齢が何歳違おうと特にどうでもいい話なので、年齢詐称自体には特に興味はないのだけど、夏川純自身がその年齢詐称を認めたというニュースを見た時に、それはなかなかすごいな、と思った。しかも、年齢詐称が取り上げられてから認めるところまでそんなに時間は掛かっていないと僕は思った。なかなか出来ることではない。
恐らく、年齢詐称をバラすことで失うものがあっても、それは自分の中で捨てられるものだ、と判断したのだろうな、と僕は思うのだ。それよりも、もっと大切な何かがあって、その何かを守るためにバラしたのだ、と。まあ実際のところはどうかわからないが、僕としてはなかなか感心できるニュースであった。
捨てる捨てないの話からは逸れるが、人間は第一感によってあらゆるものを判断しているようだ。第一感というのは、最初の3秒での決断であって、すなわち直感のようなものだ。いろいろとあれこれ悩んでも、結局最初の第一感の判断に帰着することが多いのだそうだ。
まあこういうのは分からないでもない。僕は例えば今日はコンビニで夕飯を買うわけだけど、普段なかなか食べるものを決められない。食べたいと思うようなものも特にはないわけで、何を食べたって同じだと思っているくせになかなか決められるものではない。
しかしそんな時でも大抵、初めにこれからなぁと思ったものを選んでいることが多い。外食をする時でも同じで、メニューを決めるのに悩むが、割と最初にこれかなぁ、と思ったものであることが多いと思う。
もしかしたら僕らは、特に意識していない部分で、捨てられるものかどうかの判断を初めから持っているものなのかもしれない。それが、第一感というかたちで現れているのだとすれば、僕らはもっと第一感を信じて行動してもいいのかもしれない。
判断の早い人間になりたいと思う。それがどんなに予測の範囲外の出来事であっても、的確で揺るがない判断が出来る人間になりたいと思う。まあそうなると、人間ではなくなってしまうような気もするのだけど…。
そろそろ内容に入ろうと思います。
本作は、西尾維新の人気シリーズである新本格魔法少女りすかの第三巻です。
このシリーズの概略を先に紹介しておきましょう。と言っても僕もおおまかなところしか覚えてないですけど。
小学五年生である供犠創貴と、魔法の国である長崎県からやってきた魔法使いである水倉りすかは、目的こそ違えどお互いに協力し、それぞれの目的を果たそうと日々過ごしている。創貴は世界をその手に治めるため、そしてりすかは、父であり最強の魔法使いであると怖れられる水倉紳檎を倒すためである。
二人は、りすかの魔法と、「魔法使い」使いである創貴の策略でもって、これまでありとあらゆる魔法使い狩りを行ってきたのだが、水倉神檎が実行しようとしている「箱舟計画」が進行していることを知り、それを阻止するために、途中で同盟を組むことになった、城門管理委員会の創始者の一人である繋場いたちと九州中を駆け回っている。
というような感じです。
前回までで、「六人の魔法使い」の一人目であった魔眼使いを破り、さて残りも倒してしまおう、と旅立ったところである。
さてでは今回のお話。
「鍵となる存在!!」
「六人の魔法使い」の二番目である地球木霙を福岡県博多市で早々に見つけ出し、あっさりと勝利したその日、泊まっているホテルの一室に水倉鍵と名乗る子供がやってきた。ちょうど創貴が一人である時間を狙ったかのようにやってきたその男の子は、「六人の魔法使い」の六番目でありながら人間であり、魔法は使えないが魔法封じという特殊能力を持っている、ということだった。
さてそんな彼が何をしに来たかと言えば、創貴を勧誘しに来たようだ。「箱舟計画」の一部を話、その上で仲間に引き入れる。創貴はそれを受け入れたが、しかし一席勝負を設けようということになった。二人はビンゴをすることになるのだが…。
「部外者以外立ち入り禁止!!」
ビンゴを終えた水倉鍵が帰るちょうどそのタイミングで、繋場とりすかが戻ってきた。水倉鍵が帰った後、なんとりすかの右腕に異変が生じ始めた。またその異変に乗ずるようにして、なんと彼等はホテルの一室に完全に閉じ込められてしまったのである。りすかは意識を失ったまま横になっているし、何でも食べてしまう能力を有する繋場の能力も封じられてしまっている。完全に閉じ込められた形になった。脱出しようにもまともな手はどれも封じられてしまっている。創貴が戦略的な負けを選択しようとしたその時…。
「夢では会わない!!」
これに関しては、内容紹介をしない方がいいでしょう。
といった感じです。
このシリーズが始まってからの趣とは大分変わってきていますが、今回も面白かったと思います。
これまでは、それぞれに特色のある魔法使い同士の戦いに、人間である創貴の戦略を加味し、いかに勝つかというバトルゲームで、読んだことはないけど「ジョジョ」みたいな作品だったのだけど、今回はかなり違いました。
「鍵となる存在!!」では、「箱舟計画」について明かされますが(これがもの凄い内容でした)、基本的にビンゴゲームをしているだけだし、「部外者以外立ち入り禁止!!」も、密室から脱出するというゲームみたいなもので、また「夢では会わない!!」に至ってはもう大分趣向が違うというか、かなり驚いたくらいで、結構雰囲気の違う感じになっています。
僕としては、「部外者以外立ち入り禁止!!」がお見事だな、と思いました。水倉鍵がそこまで考えて計画を練っていたのか、という驚きがあって、実質的に創貴の初めての敗戦ではないか、と思います。本作はミステリではありませんが、しかしミステリでよく提示される「何故密室にしたのか?」という問いに対して明確な答えが用意されているので素晴らしいと思いました。
「鍵となる存在!!」は「部外者以外立ち入り禁止!!」の前フリみたいなもので、まあこんなもんかという感じです。「夢では会わない!!」は、読み初めから中盤までかなり困惑するt思いますが、面白いなと思いました。ただ、予知能力についてそこまでの解釈はやりすぎだろ、とか思いましたけど。ちょっとその辺が不満と言えば不満です。まあ他に手はなかったかもしれませんが。「夢では会わない!!」はかなり気になる終わり方をしているので、続きが早く読みたいです。
どうやら「新本格魔法少女りすか」のシリーズは、次の第四巻を以って完結するようです。残念ですが、まあこの設定で長く作品を書いていくのはなかなか難しそうなので仕方ないことなのかもしれません。さてどうなりますやら。
今年は「刀語」の他にあと一冊、「人間人間」が出るはずなので、そっちも楽しみです。こんなに小説を書いて死なないだろうかと心配になりますが、まあ西尾維新なら大丈夫でしょうか。
シリーズを読んでいる人は当然本作は読むとして、このシリーズを読んでないという方は是非、第一巻から読んで見てください。
西尾維新「新本格魔法少女りすか3」

新本格魔法少女りすか3ノベルス