2007年10月07日

空想世界(TAKORASU)

街というのは基本的に、その中に生きている人があって初めて存在しうるものである。
つまり、人間の存在なくして街の存在はありえないということになる。
まあ当然の話である。
しかしなんとなく想像してしまうのだ。
何らかの事情に人類が滅亡してしまう。出来れば隕石だとか大地震とかではなく、伝染病みたいな建物なんかを壊さない原因がいい。
地球上から人類がすべていなくなる。誰一人として残ってはいない。しかし、人類がかつて生きていたという痕跡だけは膨大に残っている。
さてそこから街はどうなるか。
普通の考えれば、朽ち果ててそのまま形を残すことなく消えてしまうだろう。これまでのありとあらゆる文明がそうであったように、ほんの僅かな遺跡だけを遺して、残りのすべては消え去ってしまうだろう。
しかしそれでも想像する。
人間がいなくなった世界で、街は街として単体で存在し続ける。人間の存在なくしては語られるはずのない街という存在が、人間の存在を失ってもなおあり続けようとする。世の中の法則に逆らうようにして、街が意思を持って残り続ける。
そんなことはありえないだろうか。
人間のいなくなった世界で、ようやく街は目を覚ます。このままでは朽ち果ててしまうという危機感から目が覚めたのかもしれない。街は、他の街と協力し、時には別の街と合体したりを繰りかえしながら、ただ街として存在し続ける。人間がいなくなって既にその存在意義は失われているのにも関わらず、それでも街は街としてあり続けようとする。
しかしそれは人間にしても同じことだ。僕らだって、既に存在意義なんか失われているだろう。人間が生まれた当初は、地球にとって、あるいは世界にとってその存在は何がしかの意味があったかもしれない。しかし既に人間は、ただ生きているだけの存在でしかない。であれば、街が街として、人間の存在を無視して生き続けたとしてもおかしくはないのかもしれない。
僕らは、人が住んでいる街しか見たことがないし、これからもそうだろう。人が住んでいない街は、探せば世界中のどこかにはあるだろうが、しかしそれは既に街としての機能を失ってしまっているので街とは呼べない。あくまでも人が住んでいて初めて街というのは機能し存在することが出来る。
つまり、人間が生きている限り、街は街として単独で存在することは出来ないということになるだろう。それは、僕ら人間からしたらどうでもいいことであるけれども、もしかしたら街からしたら死活問題かもしれない。人間なんかさっさといなくなればいいのに、とか思っているかもしれない。
北村薫の作品に「ターン」というものがある。映画にもなっているらしいが僕はみたことがない。
この作品は、ある一日が永遠に繰り返されるという世界に取り残されてしまった女性が主人公で、なんとその世界には彼女一人しかいないのである。たった一人だけのために存在する街というのが出てくる。
たった一人でも、生きている人間さえいれば街というのは存在するだろうか。もちろん、機能的には失われるだろう。誰が綺麗な水を作るのか、誰が汚水を処理するのか。
しかし、存在だけであれば、たった一人であっても人がいれば街は存在しうるかもしれない。まあここまで来ると、そもそも街って何だよという定義の問題にもなってくるのだけど。
恩田陸のある短編集に、街自体が生きているという設定の話があったと思う。人々は、移動するその生きた街の上で生活をする、という話である。このイメージは本作に非常に近いな、と思う。もしかしたら恩田陸が、この世界観から話を得たのかもしれないとも思う。
街はそれ自体では生きてはいない。しかし、街という存在を生き物として捉えると面白い視点になる。あるいは、街は生きているのかもしれない。だとしたら、僕らは街という生き物に寄生している生き物なのだな、という風に思う。
そろそろ内容に入ろうと思います。
本作は小説とかではなくて、まあ画集みたいなものですね。
最近結構注目を集めているらしいTAKORASUという人の画集になります。2002年頃からネットを中心に活動をしてきた人のようで、本作が初の作品集だそうです。10分程度ですがDVDもついています。
この作品集は、機械と街と自然の融合体みたいなものを描いた世界観になっています。例えば、機械のようなキリンの背中に街が乗っている、というようなそんな感じです。本作では街というのが一つのテーマになっていて、モノトーンの作品集で街という主張が強く光っている感じです。
僕は別に美術に詳しいわけでもないし美術館に行くような趣味もないわけで、何でこんな本を買ったのか自分でもよく分かんないんですけど、ちょっと衝動的に買ってみました(まあ正確に言えば、衝動的に客注をしたのだけど)。でもこの人の絵は結構好きだなと思います。どこがどうというのはうまく説明できませんけど、機械的でどこか無機質な感じのするタッチなのに、何故か愛敬があるというような感じで、いいと思います。
個人的には、動物をモチーフにした奴が気に入っています。海がめとか鯨とかヤドカリとか駱駝とか出てくるんですけど、表情のとぼけ具合が結構好きだし、また動物と街が融合しているというそのバランスみたいなものも好きだなぁ、と思います。あと、「食べかけ果実の街」とタイトルのついたものもあるんですけど、これもいいなぁと思いました。
この作品集を見たあと、著者のHP(http://www.takorasu.com/tako_guide_frame.htm)を探して行ってみたのだけど、こっちもなかなかよかったです。この作品集には人物の絵がなかったんですけど、HPの方にはあって、それもなかなか素敵な感じでした。機械みたいな街と人物が一緒になっている絵なんかは結構いいなぁ、と思いました。また写真も撮る人らしくそれもHPに載っていたんですけど、結構好きな感じの写真を撮る人だなと思いました。なかなか多方面に才能がある人なんだろうな、と思ったりしました。
というわけで珍しく画集なんかを買ってみましたが、なかなかいいと思いました。3000円くらいするんでなかなか気軽にはオススメできませんけど、まあ表紙の絵なんかを見てみてよさそうだなとか思ったら目を通してみてください。HPなんかも見ていくとなかなか面白いですよ。モノトーンではない絵なんかもあってよかったです。誰かストーリーを考えてあげて、この人が絵を描くみたいなコミックがあったら面白いかもです。まあちょっとだけ注目してみようと思います。

TAKORASU「空想世界」


空想世界画集

空想世界画集
 

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