2004年09月17日

ifの迷宮(柄刀一)

沖縄に行く飛行機の中で読み終わった本。大分経ってからの感想だけど。
この人の作品は本当に謎が魅力的でいい。
宗門家という遺伝子技術の先端を行く企業グループの会長一家で、暖炉に顔を突っ込まれ、指先も足の裏も焼かれている女性の死体が発見された。その現場で発見された毛髪。18年前に死んだ父親の遺髪のはずなのだが、なんとその遺伝子が二年前に死んだはずの人間と同じ遺伝子を持っていた。しかもその二年前に起こった事件にも不可解な点が多く、さらに遺伝子検査をすることによってより混迷を極めていく。
やがて第二の事件が起きる。頑丈な密室のなかで、背中に鋏をつきたてられ死亡している女性が発見される。その女性の爪のなかからなんと、一つ前の事件の被害者と同じ遺伝子を持つ皮膚片が発見された。こうして遺伝子を軸に意味不明な検査結果が続出し、警察や検査員を困惑させる。それを遺伝子検査の研究員と刑事の夫婦が解明していく・・・
少し先の未来の話であり、出産前の胎児の遺伝子検査なども普及しているような社会。そういう中での遺伝子い関する示唆がかなりいい。遺伝子レベルでの差別が行われることの恐怖。優秀な遺伝子を求めるために精子バンク、卵子バンクが普及していき、障害者は生まれる前に排除されていく。そんな世界にもう少しでなろうとしえいることに対して警鐘を鳴らしているように思う。
遺伝子という目に見えないもの。人間の設計図だと信じられているもの(小説中ではそれを否定している)。弱者と共存するのではなく排除しようとする社会。今でもその傾向はあるのだろう。自分だって排除できるものなら・・・と考えてしまうかもしれない。そういう自分が怖いし、社会の流れがそうなっているのだろうな、と実感してしまう。
それにしても面白い小説だと思う。

柄刀一「ifの迷宮」


ifの迷宮

ifの迷宮光文社文庫
 

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