さて、みなさん御存じかとは思いますが、今年度の本屋大賞が発表されました。今回は、湊かなえの「告白」に決まりました。後味が悪い、と言われながらもこれだけ支持されるのだから凄い作品だなと思います。
あんなに後味の悪い作品を書く作家はどんな人なんだろうと思っていましたが、これがかなり意外なことに、「可愛らしい」という表現がぴったりくるような人でした。あんな作品を書く作家とは想像出来ないですね。
去年と今年の二度、本屋大賞の準備の手伝いということで参加させてもらいましたが、今年は会場が広くてよかったです。去年は、立錐の余地もない、というのは言いすぎでしたが、動き回る余裕がほとんどないほどの密集っぷりでしたが、今年はかなり余裕がある感じでよかったと思います。年々参加者が増えているようですごいものです。第一回の時の写真がありましたが、ほんのわずかな書店員しかいなくて、それから考えると本当に本屋大賞というのはメジャーになっていっているんだなという感じがします。
手伝い自体は、本当に大したことは何もしていませんが、僕らのような当日だけの手伝いじゃなくて、本屋大賞を運営している実行委員の人は本当に大変だろうなと思いました。ほとんどが書店員の方のはずなので(出版社や取次の人もいるようですが)、普段の書店での業務をこなしながら準備を進めるわけで、大変でしょうね。まあでも、5回を目標に始めたという本屋大賞ですが、これだけメジャーで大きな存在になって、本屋大賞創立時のメンバーは感慨深いだろうなと思います。本屋大賞を真似て、「マンガ大賞」やら「映画館大賞」やらが最近創設されるようになってきていますけど、やっぱり本屋大賞ほどメジャーにはなりきれていないだろうなという気がします。本屋大賞は既に、直木賞・芥川賞と同じぐらいのレベルの知名度だと僕は思っていますからね。すごいものを作り上げたものだなと思います。
僕も書店業界の端っこにいる身として、自分から何か行動を起こすほどの力は持っていませんが、誰かの手助けになるようなことが出来ればいいなと思っています。
そろそろ内容に入ろうと思います。
本作は外国人作家の作品ではありますが、珍しく日米同時発売という形が取られています。というか、著者はイギリス人ですが現在は東京在住で、本書も文藝春秋翻訳出版部が構想段階から関わった、日本発の作品だそうで、なかなか面白い試みだなと思います。
舞台は終戦直後の日本。1946年夏、芝・増上寺で女性の他殺死体が二体発見される。捜査本部の三波は、一年前の事件を思い出す。同じ手口で殺されているように思える事件。餓えた人々がはびこり、娼婦がアメリカ人に跪き、ヤクザが闇市を支配する占領の街で、三波は殺人犯を追って奔走する。
やがてその事件は、三波の過去を暴くきっかけへと変貌していくのだが…。
実在した連続殺人鬼・小平義雄の事件をモチーフに(本作にも小平義雄やその被害者が実名で出てくるし、他にも実在の人物が登場しているようです)、終戦直後の日本を描いた作品です。
僕にはちょっと合わない作品でした。とにかく文章が読みにくくて、半分ぐらいまでは頑張ってちゃんと読んでいたんだけど、その内無理になって、後半は流し読みして終わらせました。
僕は本を買うとき、著者の略歴とか内容紹介なんかは読むけど、中の文章とかは読まないんです。表紙が気に行ったり、なんとなく良さそうだったりという印象で買ったりします。最近は、家に読む本が山ほどあるので、そういう印象買いはなるべく控えようと思っているんだけど、本書はそんな印象買いをした作品です。表紙がなかなか好きな感じで、しかも時々は外国人作家を意識的に読もうと思っているので手に取ってみたわけです。
こういう印象買いの作品はまあ失敗することも多いので仕方ないんですけど、やっぱり本作もダメでした。普段読み終わるまでamazonの評価とかは見ないんだけど、本作はちょっとつまらなかったのでamazonの評価を先に見てみました。するとやっぱり駄目だという感想の方が多いですね。やっぱり文章が読みにくい、と。その独特な文体は、終戦直後の日本の雰囲気を写実するのにいい効果を生み出しているのかもしれないけど、それにしても読みにくいのでマイナスではないかという感じがします。
あと、ジェイムズ・エルロイの真似だという意見が結構ありました。僕はジェイムズ・エルロイの作品は読んだことがないんですが、バイト先にジェイムズ・エルロイ好きの人がいるので何となく知ってます。文体の雰囲気とか、実際の事件を扱っているところとか、またジェイムズ・エルロイには<ニューヨーク三部作>(でしたっけ?ちゃんと覚えてないですけど)と呼ばれるシリーズがあるんだけど、本書も<東京三部作>の第一作なんだそうです。そういう意味で、ジェイムズ・エルロイをパクりすぎなんじゃないかという意見がありました。まあパクってても面白ければいいんじゃないかと僕なんかは思いますが、面白くないんだからどうしようもないですね。著者略歴を読む限り、イギリスの若手作家としては割と評判はいいみたいですけどね。
まあそんなわけでオススメ出来る作品ではありません。ジェイムズ・エルロイやジム・トンプスンという作家の暗黒小説が好きらしいので、そういう作家が好きな人は読んでみたら面白いかもしれません。
デイヴィッド・ピース「TOKYO YEAR ZERO」