昨日データを見ていると、ものすごく変なのがありました。
14日付の荷物(これは13日に入荷するんですけど)の一部(文庫)が、13日に返品されているんですね。
おいおい、って感じです。
もちろん、入荷したものをすぐ返品する、というケースはあります。でもそういう場合は、本が汚いとか破れているとかそういう時で、しかも再度発注を掛けてから返品をするわけです。
でも昨日発見したものは、再発注がされていない状態で返品されていたわけです。
考えられる仮説は僕には一つしかなくて、補充の荷物を間違って返品だと判断されてしまったのではないかということ。
ウチの店は、補充を開ける場所と返品を切る場所が同じスペースにあります。即ち、同じ空間に、補充の荷物と返品の荷物が同時に存在することになります。だから間違って、補充の荷物が返品の山の中に混ざってしまう可能性もゼロではない状況になっているわけなんです。
今回はすぐ気付いたからよかったけど、もしかしたら過去にも同じようなことが起こっていたりするのかもしれません。だとしたら最悪だなぁ。何とかならんものか。
あとまったく別の話になりましたが、こんなニュース。
http://www.shinbunka.co.jp/news2009/10/091014-01.htm
二見書房が出した「読めそうで読めない間違いやすい漢字」というベストセラーが、飴とコラボする、というニュースです。飴の個包装にそれぞれ漢字クイズがあり、裏に答えがつくらしい。面白いのは、飴の名前そのものが本のタイトルとまったく同じになる、ということでしょうか。
書店的に興味深いのは、書店の取次でもこの飴を扱う、ということでしょうね。書店の取次というのはもちろん通常では本しか扱わないわけですけど(もう少し広く言えば、雑誌コードかISBNのついたものを扱う、ということです。ISBNコードのついたDVDなんかも扱ってますね)、でも書店取次が飴を扱うというのは相当稀なことではないかなと思います。まあ、書店が発注するかどうかはわかりませんけどね。どうでしょうか。
そろそろ内容に入ろうと思います。
どこにでもいるような、ごくごく普通のOLのさやか。ある日終電ギリギリで帰ってきた飲み会の後、マンションの前で男が行き倒れていた。思わず声を掛けると、「お嬢さん、よかったら俺を拾ってくれませんか。咬みません。躾のできたよい子です」という。
いい男だったし。
というわけでさやかは奇妙ななりゆきから、その男と同居生活をすることになった。彼について知っているのは名前だけ。樹と書いてイツキ。
イツキは料理の腕がハンパなかった。同居の条件として家事全般をイツキが引きうけるということになったのだけど、節約家だしマメだし料理はうまいしでいうことなしのハウスキーパーである。
イツキにはもう一つの顔があった。それが、植物オタクとしての顔である。
イツキは休みの日になると、さやかを外に連れ出した。川べりやちょっと行った先にある小さい山、あるいはその辺の道ばたにさやかを連れて行って、普通の人には雑草にしか見えない植物を摘んでは、それを使った絶品料理をさらっと作ってしまうのだ。『雑草という名の草はない。すべての草には名前がある。』と昭和天皇は仰ったそうですけど、まさにその通り。しかも無造作に適当に生えているように見える草がまたとんでもなく美味なのだ。さやかは当然のことながら、自分を新しい世界に引き込んでくれるイツキに惹かれていくことになる。
しかしイツキが何か隠しているということにも気が付いていた。
触れられたくない部分があるらしく、そういうことを聞かれると黙ってしまう。嘘はつけない。さやかもそれ以上突っ込むことができないでいる。
いつか目の前からいなくなってしまうかもしれない。そんな一抹の不安を抱えながら、さやかはイツキとの探検を心の底から楽しむのだけど…。
というような作品です。
いやぁー、べらぼうに面白かったですね!僕は恋愛小説とかって、読むけどそんなに得意というほどでもないんですね。でも、有川浩のど真ん中直球、ベタ甘ラブラブ小説は、このベタ甘っぷりはわざとだよなぁというのが凄くよく分かるんで相当好きです。有川浩の恋愛小説は、エンターテイメント色を失わず、一方で楽しく読める恋愛小説なので(恋愛小説には、重かったりめんどくさかったり複雑だったりするのもあるじゃないですか。有川浩の恋愛小説にはそんなの無縁)、メチャクチャ良かったですね。やっぱ有川浩はいいですね。ホントレベルの高い作家だなぁと思います。ただ恋愛小説だけじゃなくて、「空の中」みたいな作品もまた書いてほしいものですけどね。最近では、『恋愛小説の有川浩』みたいな感じになってしまって、そういう作品が結構増えましたからね。まあそれを望んでいる読者が多いんだろうから仕方ないのかもしれないけど、僕なんかは「空の中」みたいな傑作をまた書いてくれると嬉しい限りですね。
本書はとにかく、メインとなって出てくる登場人物が、さやかとイツキしかいません。で、ストーリーも、ほとんどが雑草を取りに出かけ、それを料理するというパターンです。そう説明されるとちょっとつまらなそうな小説に聞こえるかもしれません。
しかしまあこれが滅法面白い。まず素晴らしいのは、さやかとイツキの関係ですね。まぁベタ甘な恋愛小説ですけど、でもですね、初めはただの同居人なわけですよ。イツキも、「咬みません。躾のできたよい子です」なんてことを言うわけですからね。そんな状態からどうやって恋愛に発展するのかという部分もいいし、恋愛になってからのアマアマっぷりいいし、そしてその後の展開もなかなかいい。
とにかくイツキのキャラクターがいいんですね。うまく説明できないんですけど、ホストからチャラさを抜いた感じ、というような具合でしょうか。つまりですね、女あしらいは抜群にうまいくせに、チャラチャラしていないし餓えてもいないわけなんです。イマドキの草食系男子という感じでしょうかね。気遣いが出来て優しいし、料理を始め家事全般が完璧だし、しかも律儀で道徳的。植物オタクであるという点がマイナスにならないのであれば、これほど素晴らしい男はいないでしょう。
さやかもなかなかいいキャラしてますね。細かいところはそんなに気にしないし、素直で優しい。反応が分かりやすいし、自分の誕生日を忘れるくらい鈍かった理と、キャラクターとしては見ていて実に楽しいですね。
さらに、本書のメインとでもいうべき植物に関する話がまた実にいいですね。著者は実際イツキみたいに草を取ってきて食べるのが好きらしく(某社の担当編集者は、初対面の人に有川浩を紹介する時、「有川さんて道端の草とか食べるの趣味なんだよ!」というらしい)、本書の最後に少しだけ載っている雑草レシピも、すべて自分で作って食べてみたことがあるという(レシピ自体はいろんな本やマンガを参考にしているらしいけど)。まあ確かに、本読んで調べただけじゃこんな作品は書けないでしょうね。僕らの日常の圏内にあるのに、普段はまったく知りもしないし目にも入らないものが相手ですからね。これはホント経験者にしか書けない小説だなと思いました。
しかし雑草(雑草という名前の植物はないんだけど)の話だけでよくもまあこんなストーリーを作れるものだなと、相変わらずのストーリーテリングの高さに脱帽と言った感じです。しかもそれが恋愛小説に結び付いちゃうわけですからね。雑草と恋愛小説。ありえないですね。そのありえないことをしちゃうのが有川浩なわけですね。やっぱ凄いわ。
しかしなぁ、イツキくらい料理がうまいっていうのは羨ましいなぁ。料理って、絵を描くとか歌を歌うみたいに、センスだと思うんですよね。確かに、レシピ本とかそういうの見ながら作れば、そこそこの物は作れるでしょう。でも、作ってみたことのない料理、あるいは使ったことのない食材を使った料理を作るなんてのは、まさにセンスでしょうね。で、イツキはそのセンスの塊みたいなヤツで、いいなぁと思います。別に普段自炊とかしないんでいいんですけど、努力とかしないである日突然イツキと同じくらい料理が出来るようになったら、僕も自炊するだろうなと思います。ま、当たり前ですけど(笑)。
表紙は、森見登美彦の「夜は短し歩けよ乙女」のカバーなんかと同じイラストの人かと思っていたんですけど、全然違いました。似てるんだけどなぁ。この表紙の絵も実にいいですね。さやかが黒髪なのが実に萌えます。
まあそんなわけでですね、相変わらず有川浩のレベルが高いなぁと思い知らされた作品です。絶対に面白いんで、是非とも読んでみてください。
有川浩「植物図鑑」