2010年02月12日

幸せまねき(黒野伸一)

土取りの片付けを終えて、メンバーはそれぞれ帰っていった。カナちゃんとアカネちゃんとも別れ、志保は駅へと向かった。陽が長くなったとはいえ、そろそろ暗くなり始めている。五限上がりの土取りも、そろそろ終了だろうか、と考えた。
 駅に近づくにつれて、歩いている人の数が多くなっていった。そういう人のことを見るともなく見ていると、志保は世界の大きさについて考えずにはいられなくなっていった。自分の周りだけでも、これだけ多くの人が生活をしている。日本全国、世界全体で考えれば、もっともっと大変な数の人々が生活をしているのだろうと思う。その中のたった一人が、日常という時間の中からはみ出るようにして消えていった。しかしそのことは、この世界に何らかの痕跡を残すのだろうか。これだけ多くの人がいる中では、かすり傷ほどの痕さえ残すことは出来ないのではないだろうか。一人の人間のあまりの小ささを実感したような気になって、志保は逆にほっとした。

「失踪シャベル 4-7」

内容に入ろうと思います。本書は、今「万寿子さんの庭」という作品で話題の著者の文庫最新刊です。
舞台は中川家。学校でいじめられている弟の翔は、家に帰ると不機嫌で、母親の小絵や飼い犬のタロウに八つ当たりする。父親の真太郎は家庭に一切関心がなく、小絵が翔についての相談をしてもふにゃふにゃとした返答しかくれない。そんな夫に嫌気が差し、小絵はテニススクールのコーチと不倫に走る。姉の穰は高校生で、学校一の問題視と深い関係になっているのだけど、男の子と付き合ったことのない穰はいろいろと思い悩むことになる。
そんな崩壊寸前の家族を、飼い犬のタロウと飼い猫のミケは憂えている。しかし所詮ペットに出来ることはほとんどない。
崩れかかった家族や人間関係を、なんだかんだと言ってペットがとりなしていく、そんな物語です。
この著者の作品は始めて読みましたけど、うーん、って感じです。なんというか、出来が悪いけど世間的に人気のある恋愛小説って言ったら、なんとなくイメージ出来るものがありますか?その家族小説版、という感じがします。たぶん、こういうふんわりした話を好きだっていう人は結構いると思うんだけど、正直なところ僕には何がいいんだかよくわかりませんでした。
何か、全体的にユルすぎるんですね。家族も、確かに崩壊寸前なんだけど、だからどうしたっていう感じで興味が持てないし、いじめられてる翔とか、問題児と付き合ってる穰とかも、別にどうでもいいなって感じがする。テニスコーチと不倫している小絵なんかその極地みたいなもので、はっきり言って小絵のパートは要らないだろ、とか思いました。昼ドラみたいな雰囲気がしますね。いやいや、ありえないだろ、的な。
僕のイメージとしては、ちょっと古いタッチの絵を描く漫画家がこの作品を漫画にしたら、ちょっとぴったり来るような気はします。分かりませんけど。
というわけで、特に書くことのない作品ですね。こういう作品を良いと思う人はいるんだろうなとは想像できるけど、僕には合いませんでした。まあでも読みやすいのは読みやすいんで、読書初心者なんかには悪くないのかもしれないと思ったりはします。

黒野伸一「幸せまねき」



 

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