2010年03月14日

「ニッポン社会」入門 英国人記者の抱腹レポート(コリン・ジョイス)

敬叔父さんは、お母さんの弟で、地元で弁当工場を経営している。離婚した後、お母さんはしばらく敬叔父さんの会社で事務の仕事をさせてもらっていたし、離婚して一年も経たない内に養育費の入金が滞り、経済的に苦しかった志保たちの生活を支えてくれたのも敬叔父さんだった。最近顔を合わせることは少なくなってきたけれど、以前は敬叔父さんの家族と一緒に旅行に連れて行ってもらったり、クリスマスや誕生日にプレゼントをくれたりと、何かと気にかけてくれていた。志保は叔父さんのことが大好きだったし、叔父さんも志保に構ってやれるのが嬉しいのではないかと思えるのだった。
「もしもし、志保ちゃん」
敬叔父さんの穏やかな声は相変わらずだった。
「敬叔父さんお久しぶりです」
「最近なかなか顔を見れなくってね」
「すいません」
「いや、志保ちゃんが謝るようなことじゃないんだよ。どうにも最近忙しくなってしまってね、どうも時間が取れない」
 この不況で経営が厳しいのだろう。それでも敬叔父さんの声には悲壮感みたいなものはまったくなくて、疲れているようでもなかった。敬叔父さんのそういうところを、志保は尊敬していた。

「失踪シャベル 7-3」

内容に入ろうと思います。本日二作目の感想です。
本書は、イギリスの高級紙「デイリー・テレグラフ」の記者・東京特派員として日本に住んでいる英国人記者による、『外国人から見た日本』的な本です。つい最近売り場から外しましたけど、1年以上ずっと置いていて、確か100冊以上は売ったと思います。読んでみて面白かったんで、また置いてみようかと思っていますけど。
あとで僕が気に入った部分については細々と書きますけど、全体の内容について把握するには目次をそのまま写した方が早いと思うので、目次だけ羅列します。

「基礎編 プールに日本社会を見た」
「日本語の難易度 日本語、恐るるに足らず」
「おもしろい日本語 イライラ、しくしく、ずんぐりむっくり」
「日本の第一印象 サムライ・サラリーマンなんていなかった」
「日本の日常 日本以外では「決して」見られない光景」
「行儀作法 英国紳士とジャパニーズ・ジェントルマン」
「独創性 日本人はすぐれた発明家だ」
「ビールとサッカー 日本の「失われなかった」十年」
「行動様式 日本人になりそうだ」
「ジョーク イギリス人をからかおう」
「東京の魅力 わが町、東京を弁護する」
「東京案内 トーキョー「裏」観光ガイド」
「ふたつの「島国」 イギリスと日本は似ている!?」
「メイド・イン・ジャパン イギリスに持ち帰るべきお土産」
「特派員の仕事 イギリス人が読みたがる日本のニュース」
「ガイジンとして 日本社会の「和」を乱せますか?」
「日英食文化 鰻の漬物、アリマス」
「おさらい ぼくの架空の後任者への手紙」

大体こんな感じです。
では面白いと思った部分をとにかく羅列して行きましょう。
まず、日本という国は地球上で最もエキゾチックな国だそうですよ。著者のイギリス人の友人がまさにそういう表現をしていたそうだし、オーストラリア人の作家は日本を「不可知の国」と呼んだとか。日本は理解されるのを拒んでいるかのように見られているみたいだけど、著者はそうではなく、理解するのに他の国より時間がかかるだけ、そして探していた答えが予期していたものとは違うことが多いだけだ、と書いています。
日本のプールは、まさに日本の縮図だそうで、日本人の礼儀正しさと忍耐強さが溢れているようですよ。イギリス人は、5分休憩なんて我慢できないらしいです。
日本語についての話では面白い話が多いです。「全米が泣いた」という表現にユーモアを感じるらしいし、ずんぐりむっくりという言葉はその音感が素晴らしいとか。しくしくやイライラと言った擬音語や擬態語はまさに国宝級だけど、でも外国人には説明しないと通じないということ。
また著者のお気に入りの日本語表現ベストスリーが、3位「勝負パンツ」(この言い回しを聞いて感心しなかったイギリス人はいなかったとのこと)、2位「上目遣い」(哀れっぽい目つきで訴えかけるように見てくることを表現する言葉があるとは!という驚きだそうです)、そして1位は「おニュー」(短い英単語にたった一字を付け加えるだけで、初めて何かを使う時に感じる束の間の幸福感を見事に捉えているから、だそうです。って外国人にも、「おニュー」のそういうニュアンスって伝わるんだなぁ)だそうです。
日本以外では見られない光景。電車の中でサラリーマンが寝ている、電車の中でサラリーマンが読んでいる新聞の折り方、ハチ公前の人ごみ、などなど。他にもいろいろ書いてあるけど、なかなか短い言葉では表せない。
イギリス人は紳士の国だと日本人は思っているけど、著者曰くまったく違うらしい。口は悪いし手は出るしで酷いものらしい。日本人の礼儀正しさは素晴らしいし、著者は日本の自転車屋で本物の紳士に会ったようです。
日本人が発明したものの中で著者が一番気に入っているものは銭湯だそうです。僕も部屋風呂は好きじゃなくて(って今住んでるところには元々ないんだけど)、いつも銭湯に行っているから、なんとなく嬉しいですね。僕も、もっと若い人は銭湯に行くといいのにな、と思ってるんだけど。いつ行ってもじいちゃんばっかりだから、その内どんどんなくなっちゃうと思うんだよなぁ。
あと、文庫・新書サイズの本というのも、日本人の発明で素晴らしいみたいですよ。イギリスでは無駄に本に装飾をしたりして高くして、本を所有するということがとてもお金の掛かることなんだそうです。
著者が日本人らしくなってきているという話で面白いと思ったのが、マナーというのは絶対的な価値観ではなくて相対的なものではないか、という話。イギリスでは電車でマナーの悪い客と言えばケンカを始めたり落書きをしたりする客だが、日本でずっと生活していると、ウォークマンから音漏れさせている程度のことで不快に感じるようになってきているとか。あと、イギリスで電話をしている時、「Good-bye」や「Thanks」と言うときお辞儀をしていると姉から指摘され恥ずかしい思いをしたというのも面白かったです。
レジ打ちの速さや技量についての世界ランキングがあるとしたら、間違いなく日本が第一位だそうですよ。
著者はイギリスに帰る時、枝豆をお土産に持って帰りたいのだけど腐りやすいからいつも除外しているという。枝豆を食べた外国人はたいてい枝豆のファンになるとか。しかし、今ではイギリスで枝豆が手に入るらしく、なんと「エダマメ」と呼ばれているとか。キオスクみたいですね。
まあそんな感じの本です。普段日本に暮らしていると疑問にすら思わないようなこともたくさん書いてあって、やっぱり違う価値観の人の視点というのは面白いし新鮮だなと思いました。外国人に会っても、「納豆は大丈夫ですか?」とはなるべく言わないようにしよう、と思いました。新書で軽く読める作品だし、内容も結構面白いので、是非読んでみてください。

コリン・ジョイス「「ニッポン社会」入門 英国人記者の抱腹レポート」



 

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