2004年10月01日

あくむ(井上夢人)

井上夢人の短編集。
「あくむ」というタイトルの通り、どれも夢なのか現実なのか、その境界が曖昧な物語が揃っている。
内容を簡単に書くと、
「ホワイトノイズ」
ちょっとした好奇心から盗聴が趣味になる。ある日男女の諍いの会話を聞いてしまい、女性の方がお金を強請られていることを知るや、彼女のためになろうと奔走するのだが・・・
「ブラックライト」
展覧会を間近に事故にあった画家。目を覚ますと彼は闇の中にいた。医師の説明によれば、両手骨折そして失明という信じがたいものだった。しかし彼は腕を動かすことができ、目も見えることに気づく。彼を監禁している者がいる。一体これはなんなんだ・・・
「ブルーブラッド」
自分が他の人間とは違う「種」であることを知っている数学教師。彼は夢の中でのみ自分の欲望を解放できる。ある日その夢の中に、同じ教師の女性が出てくる。どうやら自分がデートに誘ったという設定らしい。彼は彼女に自分の秘密を打ちあけるのだが・・・
「ゴールデンケージ」
兄の部屋を覗くと、兄は血だらけのまま鏡の前で苦悶の表情を浮かべている・・・
兄は親の期待を一心に背負う優等生。しかし最近それを重荷に感じている。ある日自分の太ももに発見した白い筋が彼の、そして彼の弟の運命を変えていく・・・
「インビジブル ドリーム」
ドラマのエキストラで知り合った女性。突然変な夢を見た、と男に打ち明ける。そしてしばらくしてその女性の見た夢が男の見に現実に降りかかる。女はそれを知り恐怖し、男は彼女の不安を取り除こうと、偶然であることを立証しようとするのだが・・・
井上氏の作品らしく、「論理的」に終結することはない。もちろんこの作品はホラーに分類されるだろうし、ミステリーでないからそんなことはどうでもいいのだけど。
理由のわからない不安感、夢なのか現実なのか判断出来ない恐怖感。後味がいいとはいえないけれど、ホラーとしてなかなか面白い作品に仕上がっているのではないか、と思います。

井上夢人「あくむ」


あくむ

あくむ集英社文庫
 

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