内容に入ろうと思います。
夏休み、数学の補習のためにまばらに教室にいた生徒の一部が、とある女子生徒が窓の外を落下していくのを目撃する。吉野彼方という名のその女子生徒は、登校拒否気味で援助交際をしているという噂もあった。
吉野の落下を目撃した一人である榎戸川は、学内でも有名な『変人』である由良に付きまとわれることになる。何故か由良は吉野の死に執着し、探りを入れているようだ。
『変人』由良に無茶苦茶に振り回されているようで、実は由良は真相解明への道筋を着実に歩いていた。由良が辿り着いたのは、やるせない哀しい真実だった…。
というような話です。
ちょっとある部分について一切触れないようにして感想を書こうと思うので、何だか安っぽいミステリみたいな内容紹介になってしまいましたけど、そんな感じの作品でもありません。裏表紙に『切なく哀しい不恰好な恋の物語』って書いてあるんだけど、確かにそんな感じの作品です。
なかなかよかったですけど、なかなか以上にはちょっと行かないかなぁ、という感じの作品でした。決して悪くはないです。ただ今ひとつパンチが足りないような気がするなぁ、という感じでした。
特に前半は弱いですね。由良という変人の存在が原動力となって物語は動いて行くんですけど、それでもやっぱり何か足りない感じがしてしまう。もうちょっと何かあれば、結構いい作品になる気がしました。
後半はなかなかいいと思います。この後半については基本触れないことに決めたので、内容に踏み込んであれこれ書けないですけど、前半の由良の印象がかなり大きく変わる辺りがいいと思うし、切なさに溢れている辺りも結構好きです。前半だけだとなかなか魅力が伝わりにくいけど、後半も合わせて読めばなかなかという感じです。
個人的には、吉野彼方が死に至る過程はもう少しやりようはあったんじゃないかなぁ、と思ってしまいますね。ちょっと残念なところです。
僕は変人が大好きなんで、由良はかなり好きです。とはいえ、実際こんな人間が近くにいたら困りますけど(笑)、遠目に見る分には凄く楽しいと思うし、意外と(なんて言ったら失礼かもだけど)いい奴だし、この由良というキャラクターに出会えたことはなかなかよかったなという気がします。
決して悪くはないけど、凄くいいかというとそうでもない、という感じでした。人に勧めるかと言われれば、そんなに小説を読まない人にだったら勧めてもいいかなぁ、という感じでしょうか。ただ、全体的な雰囲気はいいですし、こういう作品が凄く好きだ、という人もきっといるでしょうから、気になった方は読んでみてください。
柴村仁「プシュケの涙」