フランスだって、私たちと同じ人間が住む現実の世界であり、おとぎの国ではないことくらいは、一応私も認識している。
しかし私は、このブログでフランスについて何かを書く時、基本的には、ステキな面だけに光をあてて書いていこうと思っている。ステキではないことは、あえて書かない方針である。
しかしながら本日は、その方針を覆すことにする。きれいな話ではない、とあらかじめ申し上げておく。
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ヴェルサイユ宮殿は、フランス絶対主義における権力と財力の象徴である。華やかで、きらびやかなイメージが先行する。
しかし、当時の生活は現代人の感覚からすると清潔とはいえないものだったという話は、どこかで耳にしたことがあるという人も多いだろう。
入浴は習慣的な行動ではなかったし、トイレは宮殿に住む人の数に対して極端に少なかった。「ベルサイユ宮殿にはトイレが無かった」という解説もたまに見かけるが、どうやら全く無かったわけではないようだ。しかし圧倒的に数が不足していたので、庭かあるいは宮殿内のひとけのない回廊などで済ませるのが普通だった。
王や王妃には、いわゆるオマルのようなものがあって、中身は従者が庭に捨てに行った。噴水のまわりなどは、格好の捨て場所だったそうである。それを考えると、この美しい庭園にも、また違った趣が出てくる。
それでも、緑の多いヴェルサイユは、パリに比べるとまだ良かったという。
革命前のパリ。
人口は増え続けていた。ヴェルサイユのように、自然の浄化に頼ることはできない。上下水道は整わず、洗濯、入浴なども含めて、頼みの綱はセーヌ川のみ。
ちなみに入浴は一生を通じてほとんどしない、という庶民も多かったそうだ。
トイレは配管から流す(落とす)システムだが、もちろん水洗ではなく、しょっちゅう詰まる。トイレの悪臭は凄まじかったらしく、便座に長く腰掛けていると、あがってくる臭気が体内に悪影響を及ぼし、病気になると思われていた。
家のまえの道路に普通に流していた、という話もよく聞く。
街全体に漂うあれやこれやの臭気で、ヴェルサイユから移動してくると、臭いでパリに入ったことが分かるほどだったという。
もちろん現在は、パリもヴェルサイユも、そんなことはない。
ないのだが、しかし。
ヴェルサイユ宮殿のトイレの少なさには、伝統というか、昔の名残のようなものを感じる。
例えば日本では、歴史的観光施設でも、テーマパークでも、トイレを探すことはとても簡単である。少し歩けば次のトイレが現れるし、多くの人が集まるところであれば、個室の数もそれなりに多い。トイレがなくて困ったという話は、昨今あまり聞かない。
ヴェルサイユ宮殿内は、ガイドブックなどにも注意書きが載っているが、本当にトイレが少ない。あらかじめ少ないと聞いていたので、トイレがあったら、とりあえず入っておくことにしようと思っていたのだが、どこで見かけても常に長い列が出来ていて、見た瞬間にスルーしたくなる。
人が多くいるのに数が少ないのだから、混雑は当然である。トイレという施設そのものが少ないうえ、規模も小さい。個室が2つとか。
家庭じゃないんだから、と突っ込みたくなる。
一応これでも増設したらしいのだが、どうせ増やすなら、いっそのこと日本の高速道路のサービスエリアで見かけるくらいの、個室が何十個もずら〜っと並んでいるトイレを宮殿内にも庭園にも、何カ所か作っちゃえばいいのに!と思う。
世界に名だたる観光地で、毎日多くの人が訪れるのに、もうこれ以上トイレを増やす気はないのだろうか。
おそらく何か事情があるのだろう、とは思う。
作っちゃえばいい、なんて簡単には言えないような、色々な要素が絡み合った、トイレ増設を阻む複雑怪奇な事情が。
または、もしかすると、混んではいるけどどうにかなってるので、トイレなんてこれ以上は必要無し!という感覚なのかもしれない。
結局のところ、ベルサイユ宮殿において現在もトイレが少ない理由について、その真相は分からない。だから私はやっぱり、サービスエリアみたいなトイレを作っちゃえばいいのに〜と思っているのである。
