2010年02月05日

幻の連載!? 第4回「「少女マンガ」トピックス<1>

 季節の挨拶文に「立春とは名ばかりの寒さ」というのがありますが、このところの冷え込みは冬の底という感じです。
 湯たんぽ、レッグウォーマー、フリース毛布2枚、足元に電気ストーブという完全装備にも関わらず、寒い。しんしんと寒い。

 キンと張り詰めたような寒気のなか、帰り道に見上げた夜空は、街灯の光に負けることなくオリオン座がくっきりと輝いていました。周辺の星々もいつもより白々と感じられて、美しかったですけどね。


 さて、幻の連載の最終回です。萩尾望都の作品が「日本SF大賞」を受賞したので、トピックスとして記事にしてみました。

「少女マンガ」トピックス<1>

日本SF大賞受賞! 『バルバラ異界』

掲載日:2007年2月23日 テーマ:読書、マンガ

「キミはいずれ息子に殺されるよ」……萩尾望都の最新作が受賞

毎年、対象年度内に発表されたSF作品のなかで優れたものに贈られる「日本SF大賞」(主催:日本SF作家クラブ)。これは、小説、評論、マンガ、 イラスト、映像、音楽など、ジャンルやメディアにとらわれず、SFでさえあれば選考対象となる珍しい賞です。その「第27回日本SF大賞」に、萩尾望都の『バルバラ異界』(小学館)が選ばれました。1980年から続くこの賞でマンガ作品が選ばれたのは、第4回(83年)の大友克洋の『童夢』以来、23年ぶりになります。

萩尾望都は「花の24年組」を代表する少女マンガ家の一人。ごく日常的なラブコメディからロマンチックホラー、SF、サイコ・サスペンスまで幅広く手がけながら、破綻することのない明瞭なストーリー展開で、多くの読者を魅了してきました。


「少女は両親を殺し、その心臓を食べたのか」……夢の中で謎解きが始まる

特にSFは、『スターレッド』『銀の三角』『X+Y』の3作品で、SFファンの投票で選ばれる「星雲賞(コミック部門)」を受賞するなど、萩尾望都の真骨頂ともいうべきジャンル。『バルバラ異界』でも、「なんだろう」と思わせるミステリー風味の始まりから、父親が息子に託した希望さえ切ない終章まで気を抜かせません。キーワードは、夢、火星、若返り、遺伝子操作、意識の共有。科学技術の発達は見られるものの、現代とあまり変わらない西暦2056年の日本が描かれます。
他人の夢に入り込み、夢の中から殺人事件などの真相を探る<夢先案内人>渡会時夫(わたらいトキオ)は、両親の殺人事件に遭遇し、7年間も眠ったままだという十条青羽(じゅうぞうアオバ)の夢を探る仕事を引き受けます。青羽の夢に入り込んだ時夫は、青羽が幸せに暮らす謎の島<バルバラ>の存在を知りますが、それはなんと、自分の息子、キリヤの夢につながっていたのでした。


「未来はきみらを愛してるか?」……父から息子への、過去から未来への

『バルバラ異界』は、一見、なんの関連もなさそうに見える事柄が最後にすべてつながるという、驚くベき収束力に圧倒される作品です。

しかし、ストーリーの核にあるのは、時夫の息子に対するベタなまでの思いです。時夫は、他人の夢に入るという能力を嫌う妻と、キリヤが2歳のときに離婚しました。息子に会うことを禁じられていた時夫は、久しぶりに帰国した日本で、15歳になったキリヤに再会します。思いがけず共に行動することになり、時夫は初めて自分が<父親>であったことを自覚し、彼を他人扱いするキリヤにどう接していいかわからず、戸惑います。恩師から「いずれお前はキリヤに殺される」とまで言われた時夫の、新米パパもかくやといわんばかりのオロオロぶりと、息子を知れば知るほど高まっていく愛情、そして少しずつ変化していくキリヤの時夫への複雑な思いが、時に微笑ましい父子の関係です。
このプロセスがあってこその、最後の絶望と希望……。息子さんをお持ちのお父さん、お母さんならさらに感動できるのではと思える、<親子>を考えさせる作品でもあります。



 『バルバラ異界』(小学館/flowers comics)は、たいへんな怪作です。ヒントは夢に潜む、「統一意識」。未読の方は、これからこの作品を読む楽しみがあるんだなあと、ちょっと羨ましい。コミックは全4巻です。一気読みをお薦め!


「barubara」(『バルバラ異界』公式サイト)
http://flowers.shogakukan.co.jp/barubara.html  
 
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2010年02月04日

幻の連載!? 第3回「少女マンガ」メモリアルコレクション<2>

 昨日は誕生日でした。一週間前までは覚えていたのですが、昨日の朝は「一昨日の月曜日が不燃ゴミの日だったから、今日は可燃ゴミだな」なんて考えていて、日付まで思いが及ばず。そうしたら、午前4時30分にマイミクさんから「誕生日おめでとう」のメッセージが! それからもメールやメッセージが次々にv 例年より多くいただいたのは、なんとなく節目の歳だからでしょうか。
 私はどうも数字が覚えられない人間で(甥の誕生日がすでにあやふや)、おりおりのお祝いなど不義理ばかりですのに、私のほうは頂戴してしまうなんて、申しわけないやら、もったいないやら。本当にありがとうございます。お心遣いがうれしいです。
 極寒の日に、ぽかぽかした温かさをいただきました。すてきな一年になりそうな予感がしていますv


 幻の連載の第3回目です。予定では、ときどき関連のニュースを交えながら、各マンガ家さんの代表作を2作ずつ紹介していくつもりでした。
 ということで、池田理代子からもう1作。やはり私はアニメ畑の人間なので、この作品になりました。

「少女マンガ」メモリアルコレクション<2>

『おにいさまへ…』

掲載日:2007年2月14日 テーマ:読書、マンガ

疾風怒濤の愛憎ドラマのエッセンスが詰まった中編の傑作

池田理代子の代表作といえば、『ベルサイユのばら』をはじめ、第一次世界大戦やロシア革命をモチーフにした『オルフェウスの窓』、ナポレオンの栄光と失墜の半生を描いた『栄光のナポレオン -エロイカ』、「大帝(ヴェリーカヤ)」と称されたロシアの啓蒙君主エカテリーナ2世の伝記のマンガ化『女帝エカテリーナ』など、外国ものの長編作品が挙げられるでしょう。長編は史実と絡めながらのダイナミックなストーリー展開が魅力的ですが、その根底に流れる独特の愛憎劇のエッセンスを直に味わいたいと思われるなら、お薦めなのが中・短編です。
今回ご紹介します『おにいさまへ…』は、「週刊マーガレット」(集英社)で1974年に連載された中編マンガ。名門女子校に入学した普通の女子高生の目を通して、優雅に着飾った上流階級の少女たちの、家柄や血筋へのこだわり、優越感がもたらす残酷、保身のための欺瞞などが暴かれていきます。


マンガ『おにいさまへ…』から、昼メロ真っ青のアニメへ

陰のあるかっこいい上級生(もちろん女性)に倒錯した愛を感じ、思い悩む主人公。計算高く上級生に取り入るわりに、主人公へなみなみならぬ執着と男性不信を露にする同級生。上流階級のプライドゆえに、父親に愛人がいた事実が許せず、妾腹の妹に残酷な仕打ちを繰り返す姉。無気力に死の影を漂わせる上級生と、自身の命の限りを知るがゆえに最愛の人さえ突き放してしまう、その友人……。そこに、名門女子校の中でもさらに才色兼備を誇る生徒だけが選ばれる「ソロリティ」の制度が加わって、学校生活はますます複雑なものに。
物語は、主人公が「おにいさま」と呼ぶ大学院生にあてた手紙の内容として進行します。手紙を読む彼の「たった半年ばかりのあいだに、きみをそんなにもおとなにしたものはいったいなんなのだろう」という慨嘆に、思わず共感してしまう怒濤の展開。そこには人間の価値を一部の人間が決めることの無意味さ、“上流”という意識の愚かさがメッセージとして込められています。
『おにいさまへ…』は1991年、出崎統の監督、杉野昭夫の作画監督でアニメ化されました。この二人は『エースをねらえ!』や『あしたのジョー』、近作ではNHK放映の『雪の女王』などを担当した名コンビ。出崎氏は『ベルサイユのばら』『はじめ人間ギャートルズ』の監督としても知られ、特に原作を大胆に解釈した構成と演出に定評があります。
『おにいさまへ…』はNHK BS-2で約1年間放送されましたが、監督は原作のドラマティックな愛憎劇をさらに誇張。昼メロも及ばない、絡まり合った血縁関係を含む複雑な人間模様や、キャラクターごとの秘められた過去、極端な感情描写によって、視聴者に衝撃を与えました。


「ソロリティ」ってホントにあるの?

作品内で大きな意味をもつ「ソロリティ sorority」は、アメリカの大学などにある女子学生の社交クラブのこと。成績や容姿の優れた学生が、クラブのメンバーの審査を経て入会を許され、特別な寮で共同生活をします。メンバーになれば、OGの力で就職にも有利。男子学生にも同じようなグループがあって、こちらは「フラターニティ fraternity」と呼ばれます。歴史上、社会的な身分制度のなかったアメリカがつくりだした、“上流階級”登竜門といったところでしょうか。



 「社会的な身分制度」というところ、「ヨーロッパの貴族と庶民のような階級制度」、あるいは「日本の士農工商のような階級制度」にしたほうがよかったかも。  
 
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2010年02月03日

幻の連載!? 第2回「少女マンガ」メモリアルコレクション<1>

 約3年前に書いたテキストです。今読みなおすと、「中高年層向け」ということをすごく意識していたんだなあと思います。文章が固い!(苦笑)
 直したいところもありますが、あえて掲載時のままで。今、書き直したら、どんなものになるのか、興味がなくもないのですが……。変わらなかったりして。

「少女マンガ」メモリアルコレクション<1>

『ベルサイユのばら』

掲載日:2006年12月25日 テーマ:読書、マンガ

今年、『ベルサイユのばら<完全版>』が刊行されました

さて、“花の24年組”からまずは池田理代子の『ベルサイユのばら』をご紹介しましょう。マンガを読まれたことはなくても、書名に聞き覚えのある方は多いのでは。この作品は1972年から73年にかけて「週刊マーガレット」(集英社)に連載されました。
74年に同タイトルの歌劇が宝塚歌劇団にて初演され、大ヒット。以来、たびたび再演されては人気を博しています。またテレビアニメから劇場版アニメになり、カトリオーナ・マッコールの主演で実写映画化もされました。少女マンガの歴史における金字塔的作品で、2005年12月〜2006年6月にかけて集英社から『完全版 ベルサイユのばら』全9巻が刊行。また「朝日新聞土曜版be」にて、ベルばらキャラが活躍する4コママンガ「ベルばらKids」が連載中です。


18世紀、フランス革命前夜に花開いた運命の恋

物語の舞台は18世紀のフランス。ジャルジェ将軍は、家督を継がせるために、生まれたばかりの末娘を男として育てることを決意します。オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェと名付けられた子どもは、父から剣術を学び、若くして近衛連隊長(准将)の地位に就きます。美しい王太子妃マリー・アントワネットの寵愛を得たオスカルは、世間知らずで浪費家の王太子妃に「よき王族」たるよう忠告しますが、「自分が幸せであれば国民も幸せである」と考える彼女には届きません。先王の死により、王妃となったマリー・アントワネットは自らの贅沢に税金を湯水のごとく使い、ついに国庫を破綻させます。そんな王妃を心配し、苦悩するオスカルは、王妃とも親しい、大人の魅力のスウェーデン貴族フェルゼンに思慕を抱くようになります。しかし彼の想い人が王妃だと知り、身を引くのでした。
国民の窮乏を目の当たりにし、またロベスピエールら若き革命家の熱情に接したオスカルは、自らが属する貴族社会に疑問をもつようになります。揺れ動くオスカルの心を受けとめたのは、幼いころから共に育った従者のアンドレ。二人の間に芽生えた恋は、しかしフランス革命という嵐に翻弄される運命にありました。


シュテファン・ツヴァイク『マリー・アントワネット』もオススメ

『ベルサイユのばら』は、オーストリアの伝記小説家シュテファン・ツヴァイクの『マリー・アントワネット』から着想を得ているとか。小説はマリー・アントワネットを主人公に、フランス王家に嫁いできたまだ少女の彼女が、宮廷内の権力争いや陰謀に巻き込まれながら王妃となり、やがて革命に追われていく半生を描いています。まるで王妃の傍にいて書いたがごとくのリアルな描写と、革命前後の王妃の劇的な変化がドラマチックで、読みはじめたらぐいぐいと惹きつけられます。こちらもオススメ。
1789年、フランス革命はバスティーユ監獄襲撃から始まりました。しかし現在、パリにバスティーユ監獄はありません。バスティーユ広場にその名を残すのみです。それでも探せば、メトロ・バスティーユ駅の5番線Bobigny行きホームに監獄の壁の遺構を見ることができますし、アンリ4世大通りの舗石は監獄の壁の跡に沿って敷かれています。パリに行かれたら、バスティーユ広場のカフェでカルヴァドスのグラスを傾けながら、クライマックスシーンなど思い起こされてはいかがでしょう。パリの町が、その歴史がぐっと身近に感じられることでしょう。


「池田理代子オフィシャルサイト」
http://www.ikeda-riyoko-pro.com/



 ちょうど2007年1月にソフィア・コッポラ監督の映画『マリー・アントワネット』が日本で封切られるということで、ナイスタイミングとこの作品を選びました。

 『ベルばら』と言えば、大学の部室を思い出します。高校までマンガを禁止されていたので、同世代で知ってて当然とされる作品でも未読のものが多かったんですよね。Cartoon同好会の部室に全巻揃っていたので、昼休みとか休講のときとかに部室に行っては読みふけっていました。
 当時は、こんなふうに『ベルばら』について原稿を書くことがあろうとは思いもしませんでした。こういう巡り合わせもあるのかと思えば、おもしろいですね。


映画『マリー・アントワネット』サイト
http://www.ma-movie.jp/  
 
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2010年02月02日

幻の連載!? 第1回「少女マンガ」メモリアルコレクション<0>

 半分は仕事、半分は趣味のようなかたちで寄稿していた「Yahoo!セカンドライフ」というサービスが、2009年12月24日に終了しました。
 これは、「セカンドライフ」という名が示すとおり、中高年層に向けて「ファイナンス(投資・保険)」「ヘルス」「旅行」「料理」などの項目で、各分野のプロが指南するというもの。「All About」の完全プロ版と言えば、わかりやすいでしょうか。

 私は「趣味」の項目のなかで、「(少女マンガを読んだことがない)中高年層に少女マンガのおもしろさを語る」というコンセプトの原稿を依頼されていました。現在の流行を追うというよりは、金字塔的な作品を紹介するということで、「24年組」なのはそのためです。
 それまでマンガは娯楽としてのほほんと読んできたので、おもしろさを分析したり、体系的に整理したり、歴史的な意義を考えたりしたことはありませんでした。あまりにも感覚的に捉えていたために、「マンガを知らない人にこのおもしろさを伝えるにはどう書いたらいいんだろう」と、毎回うんうん悩みながらの寄稿でした。しかし、連載4回で「セカンドライフ」の運用システムが変わったため、それきりになってしまったのです。
 担当の方から「こういう分野のテキストは望まれているので、書けるときでいいのでこれからも続けてください」と言っていただいたのですが、仕事ではなく趣味オンリーで書くには時間的、精神的負担が大きすぎるので、ぶっちゃけ、放り出してしまったんですね。

 サービス終了に伴い、記事データが戻ってきましたので、このblogにいらしてくださっているほとんどの方が知らないであろう、幻の連載原稿を本日より順にお見せしましょう。って、たいしたものでもありませんが……。

 まずは栄えある(笑)、連載1回目です。

「少女マンガ」メモリアルコレクション<0>
掲載日:2006年12月5日 テーマ:読書、マンガ

「『マンガ』を読まれたことはありますか?」

現在、雑誌やコミックで読まれています「ストーリーマンガ」。これ、1950年代に手塚治虫によって確立されたものであること、ご存じでしたか?  それまでは、マンガといえば、新聞にあるような政治風刺の1コマ漫画や『のらくろ』のようなコマ漫画のことでした。そこにダイナミックなストーリー展開と大コマ小コマを駆使したスペクタクルな画面構成を持ち込んだのが、手塚治虫。その先鋭さに衝撃を受けた藤子不二雄、石森章太郎(石ノ森章太郎)、松本零士ら後進のマンガ家たちが手法を継承し、「ストーリーマンガ」はやがて日本のマンガのメインストリームとして定着しました。
さて、1970年代まで、少年向け、少女向けを問わず、マンガは男性マンガ家が描き、男性編集者が編集していました。当時の「少女マンガ」は、男性の視点でつくられた、女性が主人公の古典的なラブストーリー一辺倒だったのです。


女性による女性のための「少女マンガ」の誕生

そんな「少女マンガ」に革命をもたらしたのが、女性のストーリーマンガ家の登場でした。
竹宮惠子と萩尾望都が同居する東京都練馬区大泉のアパートを拠点として、共同生活を送りながら制作にいそしむ新進気鋭の少女マンガ家たちは、池田理代子 (1947年生まれ、1967年デビュー)、大島弓子(1947年生まれ、1968年デビュー)、山岸凉子(1947年生まれ、1969年デビュー)、青池保子(1948年生まれ、1963年デビュー)、木原敏江(1948年生まれ、1969年デビュー)、樹村みのり(1949年生まれ、1964年デビュー)、萩尾望都(1949年生まれ、1969年デビュー)、山田ミネコ(1949年生まれ、1971年雑誌デビュー)、竹宮惠子(1950年生まれ、 1968年デビュー)、ささやななえ(1950年生まれ、1969年デビュー)、増山法恵(マンガ家ではないが、マンガ原作など、竹宮惠子との共作が多い)。そろって1949(昭和24)年前後の生まれだったことから、後に“花の24年組”と呼ばれるようになります。
彼女たちが描くマンガは必ずしも少女が主人公ではなく、少年だったり、青年だったり、人外の者だったり、奔放。物語にはSFやファンタジー、歴史などの要素が加わり、舞台は日本から外国へ、宇宙へ、架空世界へ。画面もまた、キャラクターの顔のアップに花が乱舞するような、華やかかつ複雑なものになりました。彼女たちは若い感性と独創的なアイデアで、「少女マンガ」の世界を広げていったのです。


今だから読みたい“24年組”の作品

「少女マンガ」を読みたいと思った時期に、「マンガなんて」と親に眉をひそめられませんでしたか? 当時、読めなかったあなた。あるいは「少女マンガ」の存在を知らずにいたあなた。いかがでしょう、同世代の女性マンガ家が、20代、30代にどんな物語を紡ぎだしていたか、興味はございませんか? まずは名作と呼ばれる“24年組”の作品から、旬のトピックスも交えながら「少女マンガ」をご紹介していこうと思います。



 「1970年代まで」じゃなくて、「1960年代まで」ですね orz。  
 
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2010年01月27日

『特捜最前線』叶旬一警部補……逝去

 訃報を見て、「うそ……」と絶句してしまいました。夏夕介、胃癌で逝去されたそうです。59歳なんて、まだお若いじゃないですか!

 夏氏の代表作と言えば『特捜最前線』の叶旬一警部補役しか知りませんが、この刑事ドラマは私にとって祖母の思い出と結びついた大切な大切な番組です。
 大学4回生から大学院にかけての3年間、講義のコマ数がぐっと減ったので、わりと家にいることが多かったんですね。当時、朝日放送の平日15時〜はTVドラマの再放送枠で、『特捜最前線』を長く放送していました。その時間は祖母と私のお茶タイムで、『特捜最前線』を観ながら祖母の肩叩きをするのが、私の日課だったのです。

 「船村刑事(大滝秀治)の回は人情ものが多いねえ」とか、「長坂(秀佳)さんの脚本は時限爆弾とかハラハラする話が多いわ。心臓に悪い」とか、「紅林(横光克彦)さんは賢そうでええねえ」(祖母は紅林刑事と二谷英明演じる神代警視正のファン)とか、「また吉野刑事(誠直也)が先走るんやで」などなど、今でも祖母の肩の感触とともに交わした会話を思い出します。私が叶刑事のファンなのはモロバレで、「叶さんが出てくると、あんたの手に力が入る」と笑われたものでした。

 ついでに、橘刑事役の本郷功次郎や横光克彦が好みの母から、「あんたはなんでそんな優男が好きなん?」と言われてムカついたことも、今ではいい思い出です。

 世間でも学校でも評判だったにも関わらず『太陽にほえろ!』も『西部警察』も観ていなかった私にとって、和製ミステリー・サスペンスの連続テレビドラマは『特捜最前線』の再放送が初体験。人情がらみ、金銭がらみの個人レベルの事件から、国際テロ、政治汚職、組織犯罪、麻薬、全共闘時代の名残り、特に当時の世相を浮き彫りにした土地転がしなど、リアリティのある重厚なドラマにどっぷりハマりました。

 繊細そうな甘いマスクなのに、言動はトゲがバリバリで、計算高い理性的なタイプかと思いきや、ツッパリ型の独断専行。できた大人が多い特捜チームのなかではちょっと浮いた存在で、貧乏くじを引くことが多かった叶刑事。
 彼が主役の回は、もう最初から最後までハラハラさせられっぱなし。むしろほかのメンバーのフォローやバックアップに励んでくれているほうが、その冷静さや手際の巧緻さが際立ってかっこよく見えるという、ある意味、ファン泣かせな役どころ。
 世間に対して不器用に斜に構える彼と、なにごとにもまっすぐぶつかる熱血漢の吉野刑事との凸凹コンビっぷりも、シリアスタッチだった番組のなかでの笑いどころで、息の抜きどころでした。
 あまりにも叶刑事の印象が強すぎて、好きすぎて、私のなかで夏氏がイコール叶刑事になってしまったのは、なんともしようのないハートの作用です。


 以後、2時間枠のサスペンスドラマなどに夏氏の姿を見つけて、「あ、出てはる出てはる」とそのまま見入ること、しばしば。追っかけとは言わないまでも、画面にチラリと映れば、「あ、叶さん!」と目が行く俳優さんでした(こんなふうに「あ!」と思う俳優さんはふたりだけで、もうひとりは田中実)。

 もうお姿を拝見することはないんだ──。そう思うと、20代の記憶がはるかに遠ざかったような、ひどく自分が年を取ってしまったような気がします。信じがたい思いと力が抜けたようなこの感じは、少し後を引きそうです。

 叶警部補、お疲れさまでした。忘れえぬ思い出をありがとうございました。
 どうぞ安らかにお眠りください。  
 
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2010年01月21日

2010年修羅場開始のお知らせ

 日中は暖かかったのに、夜になってどんどん冷えてきました。ぐんぐん温度が下がるので、ゴウゴウたる下降音が聞こえるようです。実際、外、すごい風だしな。

 友人のblogで紹介されていた「男脳女脳診断」をやってみました。以下、結果。

あなたのポイントは−30ポイントです(男脳度数:65%/女脳度数:35%)。
 ※ ポイントは、-100〜100ポイントで計算され、マイナスが大きいほど、男性脳で、それに対し、プラスが大きいほど、女性脳となります。

<中性的男性脳>
あなたは、標準的な男性脳の持ち主ですが、同時に女性的な面も、いくらか持ち合わせています。どちらかというと何かに挑戦するのが好きで、空間能力や論理的な考え方を使う分野で力を発揮できます。比較的に人との対話を重視し、仕事面ではチームの取りまとめをすることに適しています、努力次第で、女性的な考え方や感情なども得られます。



 標準的な男性脳? それはいったいどんなものなのか、ナゾですが。なるほど、「何かに挑戦するのが好き」というのは当たっているような気がします。ただし10年くらい前までの私ですけどね。今は「めんどくさい」が先に立っちゃう(笑)。
 空間把握能力などありませんし、論理的な考え方もできませんが、言われてみれば、耳目に触れる有形無形のモノについて気になるのはそこかなあ。小説や絵画、音楽なども、感性オンリーでつくられたものより、裏に到達点に到るまでの理性的な構成や感動を生み出す計算が感じられるもののほうが好きです。
 対話や取りまとめもめんどくさくって、最近はすっかり引き篭もっておりますよ。寒いしな。まあ、インタビュー仕事が多いのは、人から話を引き出すのがまあまあイケてるってことなんでしょう(でなければ、仕事は来ないやね)。対話を重視というのは当たっているのかもね。

 しかし、努力次第ってのはなんだ(笑)。これがいちばんウケたわ。どう努力すれば女性的な考え方や感情が得られるのか、そこを書いておいてくれないと! なんだか永遠の謎を残されたような気が……。
 そうか、私が女性の気持ちを理解するには努力が必要だったのか。どおりで「女性にウケるような文章」という注文が来ると呻吟してしまうはずだ。厳しいなあ orz。

 性格診断や心理分析は、この設問からこういった結果が出てくるんだと、「へえ」と思うことがしばしば。興味のある方は、下記サイトへどうぞ。

「いこいの広場」内「男脳女脳診断」ページ
http://siestanet.com/sindan/


 1月に発行予定だった2冊。1冊は2月10日の発売になったようです。もう1冊、ほんのチョッピリお手伝いしたほうは、発売日未定になってますね。小耳に挟んだ進行状況では、1月は無理でも2月には出るんじゃないか、と。
 2月下旬の小冊子は、本日、校正終了。問題がなければ、予定どおりにお目見えするはず。
 そして、昨日の電話と今日のメール。4月発行・配信予定のもの2件のほか、3月に発行・配信の仕事が2件入ってきそうです……って、マジですか? このタイミングで3月モノってアリなんですか!? 昨夏よりもすごいじゃん。いいかげん無理きかないんで、限界に挑戦なんてしたくない。早くも破綻の予感がして、すんごい不安だ。主にスケジュール的な意味で。
 ほんとに本決まりしちゃったら、またしばらくあちらこちら開店休業になりそうです orz。  
 
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2010年01月19日

神社にまつわる幕末小説『ゆめつげ』で、時代の空気を感じる

 4、5年前に「時代小説ブーム」と聞いた気がするのですが、今も続いているみたいですね。書店に行くと時代小説を集めたコーナーが設置されていますし、新刊も平積み、棚にあっても面出し率が高い。もともとブームだったところに、歴史ブームも加わっていよいよ磐石というところでしょうか。
 池波正太郎、柴田錬三郎、藤沢周平、山田風太郎、司馬遼太郎といった時代小説・歴史小説の大御所に加えて、最近では『バッテリー』のあさのあつこが『弥勒の月』『夜叉桜』を、SF・ライトノベル作家で『蒼穹のファフナー』『シュヴァリエ』『ヒロイック・エイジ』のアニメの原案・脚本でも知られる冲方丁(うぶかた とう)が『天地明察』を発表するなど、意外な作家の参戦もあって、目が離せなくなってきました。

 私はと言うと、時代小説はめったに手に取りません。司馬遼太郎の歴史小説はそこそこ読みましたが、時代小説については、記憶にあるのは平岩弓枝の『御宿かわせみ』シリーズを何冊かと宮部みゆきの『初ものがたり』くらい。事務所の所長には「藤沢周平くらい読め」とよく言われるんですけどね。藤沢周平の美文は、一度は触れておくべきなのだとか。


 さて、年末の帰省のおり、新幹線の中で読もうと持ち込んだのが、畠中恵の『ゆめつげ』(角川書店/角川文庫)でした。氏の代表作『しゃばけ』シリーズのうち『しゃばけ』『うそうそ』がTVドラマ化されたので、ご存知の方も多いでしょう。本書『ゆめつげ』は『しゃばけ』シリーズではありませんが、やはりファンタジーよりの時代小説です。

 黒船来航から10年を数えた、江戸時代末期のお江戸は上野。その片隅に、宮司の父親と禰宜(ねぎ)の兄弟が切り盛りする小さな神社──清鏡神社がありました。兄の弓月はのんびりとしたお人好し。しっかり者の弟・信行は、兄のトボけた言動にツッコミを入れつつも、そのつかみどころのなさを案じています。
 そんなある日、白加巳(しらかみ)神社の権宮司・佐伯彰彦が訪ねてきました。極上の社格を誇る神社の権宮司の来訪を訝しむ父子に、彰彦は夢告を依頼します。実は清鏡神社にも小さなウリがあり、それが弓月の夢告こと夢占いでした。精神統一することで神鏡に夢を結び、それを読み解くのです。ただしその信託は的を外してばかりで、故に氏子しか知らない「小さなウリ」だったのです。
 彰彦に見せた夢告も、的外れな結果に。しかし彰彦は白加巳神社でもう一度占ってほしいと言います。本殿の修理にも事欠く清鏡神社。弓月は屋根の修理代と引き換えに、大物札差(ふださし)の行方不明の子どもについて占うことに……。

 既読の『しゃばけ』でも感じましたが、畠中氏はまず導入部分が上手い! 禰宜の兄弟が辻斬りに襲われる、たった5ページの緊迫感に満ちたシーンのなかで、黒船来航後の幕末であること、浪士による辻斬りが横行していたこと、そして禰宜兄弟の人となりまで、読み手に伝えてしまいます。
 今は何年何月で、場所はどこで、その時代の世情はどうで、登場人物の容姿性格はこうで、などと説明文で行を埋めなくても、事件と同時進行で物語世界を表現してしまえるという、これはいいお手本です。

 また、古い言葉遣いやセリフ回しを多用していないにもかかわらず、江戸時代に生きている人が話しているように感じられるところもさすが。それは、登場人物の立ち居振る舞いや価値観が、現代ではありえない、時代という枠の中にきっちりはめられていてブレがないから。また、建物や小物、着物などの風俗に、時代が吟味されているから。
 私は江戸時代をよく知りませんから卑近な例で言いますと、昭和40年代前半までの低所得者向けアパートで、部屋の電話が鳴る描写はおかしい。当時は電話加入権が高額だったので、たいていの店子は電報か大家の電話を使っていましたから。今は希少になったであろう「呼び出し電話」ですね。
 そういうレベルでの「あれ?」と引っかかるところがないというのは、その文章が書かれるまでに膨大な調査があったということ。畠中作品のいいところは、調査した事柄をいちいち得々と書いてしまわないところ。知識も情報も文章をつくるための材料に過ぎず、どんどんそぎ落として知識とも情報とも感知できないように埋没させてしまう。引き算の文章づくりは、つい衒学に走る私などは見習うべきところです。

 とは言っても、時は幕末、舞台は神社です。当時の神仏習合の実態、やがて明治政府が発布する「神仏判然令(神仏分離令)」や神官・社家の世襲を禁止し、政府任命の神職が神社に奉仕することになる「太政官布告」を予感しての、神職たちの不安や動揺がかなりリアルに描かれていて、思わぬところで勉強になりました。
 幕末の「浪士の辻斬り」も、これまでは新選組や新徴組と尊皇攘夷浪士や不逞浪士との戦いの狭間で起こったことのように感じていました。でも辻斬りに襲われた弓月と信行の必死の逃走に、江戸の町人にとっては、当然のことながら、恐怖以外の何ものでもなかったよなあと見方が変わりました。

 物語が進むにつれて、弓月から立ち上る血臭が強くなってきます。弓月が夢告をしないと事態が進まないという、ストーリー的に平板に陥りそうなところ、血の色と匂いがおどろおどろしくも危機感を高めていきます。
 白加巳神社の付近で辻斬り浪人が消え、境内で人が殺される……。謎もどんどん増えますが、最初に提示された「行方不明の子どもの謎」が、敷かれた伏線の集束するところで解決されるのが気持ちいい(途中で◯◯トリックと気づきましたが、意外に思う部分もあって、得心の膝打ち!)。手馴れた物語構成は、まさに「信頼と安心のクオリティ」です。

 惜しむらくは、弓月と信行の兄弟のやり取りが物足りなかったこと。弓月の視点で書かれているので、他の登場人物について描ききれないのは仕方がないのですが。いちばん身近な存在で、頼りない兄を叱りつけながらも、その心のあり方を心配しているという(兄弟萌えにはたまらない)設定でもあるのだから、そのあたりをもう少し掘り下げてほしかったですね。弓月の思いの比重が彰彦に傾いてしまったのがちょっと残念。

 あと、白加巳神社の境内の見取り図が欲しかった! 小説を読んでいて、なにかしらの絵図が欲しいと思ったことなどありませんが、『ゆめつげ』に限っては「建物の位置関係がわからない」と頭を抱えてしまいました。参詣したことのある神社の記憶を呼び起こしながら、「拝殿がこのへんにあるとすると、庁屋はこの位置?」「水堀って、東殿とどういう位置関係?」などなど想像しましたが、見取り図があれば、この苦労は無用だったはず orz。

 ま、そんなことは枝葉末節。最後はサイキック弓月のパワー全開で、余韻のある引きもいい。時代小説入門に適した作品だと思います。未読の方は、ぜひご賞味あれ。  
 
Posted by zatsubundou at 23:52Comments(0)TrackBack(0)書評